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がん医療はデジタル化でどう変わる? 日立ハイテクと医療研究者が語る

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月29日 19時44分

 C-CATでは、医療機関からがん遺伝子パネル検査の検査結果や診療情報を受け取ったあと、日本のがんゲノム医療データベースに登録。医学文献や治験、臨床試験の情報を追加した「C-CAT調査結果」を各医療機関に返却している。結果を受け取った医療機関では、担当医や専門家が集結し、患者一人ひとりに合わせた治療法をエキスパートパネルで検討できるという。

 8月31日時点で、C-CATには8万5000例以上のがん遺伝子パネル検査データが登録されている。登録者数3万例時点の集計によると、エキスパートパネルにより治療薬の選択肢が提示された症例は44.5%、提示された治療薬を投与した症例は9.4%だった。この現状について河野氏は「どのような薬が効くのかを検討し、患者さんに正確な情報を提示するには、最低でも10倍のデータが必要です。しかし、検査の数が増えていくと、医療現場にかかる負担が大きくなってしまいます。例えば電子カルテから情報を出力して、自動でC-CATに送るようなシステムが作れたら、がんゲノム医療はさらに発展すると思います」と話す。

 C-CATに集まっているデータは、さまざまな研究機関や製薬企業、検査企業に提供され、医薬品の開発や医学的な知見の創出のために利用されている。河野氏は「ビッグデータの最大のメリットは、症例の少ない希少がんの情報を集計できることです。日本人に特異的ながん種や、薬が効きやすい人の特徴など、詳細な情報を検索できるようになっています。製薬会社や研究者に利用していただくことで、次世代に向けた治療法が開発されていくと期待しています」と話し、これからのデータの利活用について次のように語った。

 「患者さんが協力してくれて、病院がデータを入れてくれて、検査会社が解析してくれる。この協力関係で成り立っている、いわばドリームチームなのです。ただ、遺伝子パネル検査が広がると、どこも負担が増えてしまいます。あらゆる企業とコミュニケーションを取りながら、デジタルテクノロジーをうまく取り入れていきたいです」(河野氏)

●診断×治療×デジタルで「がんを恐れることのない社会」へ

 日立は4月、ヘルスケア事業本部を会社分割により日立ハイテクに承継した。日立グループにおけるヘルスケア事業を強化し、診断から治療にわたる医療全体に焦点を当てた活動を始めたのだ。新しい組織では、高齢化に伴い深刻化するがんをターゲットとして「がんを恐れることのない社会の実現」を将来の目標に定めている。

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