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がん医療はデジタル化でどう変わる? 日立ハイテクと医療研究者が語る

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月29日 19時44分

 日立ハイテクの高木氏は「日立ハイテクで実績のある医療機器とデジタルを掛け合わせ、医療機関や患者に提供する価値を拡大し、ヘルスケアの進化に貢献したい」と話した。同社は、がん医療の個別化の実現、そしてがん医療の進化を促進するためにさまざまなことに取り組む。当日は3つの新しい取り組みを説明した。

 1つが、がんゲノム診断の高度化だ。日立ハイテクは米国で検査事業を手掛けるInvivoscribe社とパートナーシップを結び、血液がんをターゲットとしたがんゲノム検査の高度化に取り組んでいる。検査事業とは、医療機関から届いた検体を検査して、その結果を医療機関へ返す事業のことだ。現在の医療業界では、単に装置が出力したデータを医療機関に返すのではなく、遺伝子の変異を見つけたり、変異の背景を分析したりして、付加価値をつけた状態で返すことが求められている。

 高木氏は「ヘルスケアデータの価値が上がることで、例えば、製薬企業が新しい診断薬を開発する際の重要な情報になります。医療機関と製薬企業と連携して、がんゲノム診断の高度化を支援していきたい」と話す。

 次に、ゲノム変異の新たな診断手段の確立として、これからのがん診断を変えていく新たな取り組みを示した。日立ハイテクは8月、ヒトゲノムの構造多型情報を取得する装置などを手掛ける米Nabsys社を連結子会社化。Nabsys社のシステム「Ohmx」と、日立ハイテクが開発したソフトウェア「Human Chromosome Explorer」を組み合わせ、ゲノムの構造的な変異を検査・解析するソリューションを実現した。特に、遺伝性のがんや希少がんに関して、これまでの検査では見落とされてきた遺伝子の変異が解析できるようになることで、新たな診断技術の開拓に期待がかかる。

 最後に、患者一人ひとりに合った治療法を探索するために、日立の基礎研究センターの取り組みを紹介した。手術療法、抗がん剤療法、放射線療法に加えて、がん治療の第4の柱といわれる免疫療法(がんを攻撃する体内の免疫細胞を使って治療を行っていく療法)。中でも特に注目されているCAR-T療法は、患者から採取した免疫細胞に特定の遺伝子を組み込み、活性化した免疫細胞を再び患者に投与することで、免疫細胞ががんを攻撃して治療する療法だ。

 しかし、この療法は全国の限られた施設でしか受けられないほか、意識障害などの副作用が起きやすいなどの課題がある。免疫療法の適用拡大・効果向上を実現するには、投与する遺伝子の最適化が重要だという。

 高木氏は「遺伝子の最適化は製薬企業が時間とコストを掛けて取り組んでいる部分です。日立グループは導入遺伝子のデータベースを構築し、最適化に取り組む製薬企業に利活用していただくことで、研究開発の期間短縮やコスト削減に寄与していきたい」と話した。

 「日立グループはデジタルに貪欲です。医療業界全体でヘルスケアデータを蓄積し、その先にあるヘルスケアナレッジの蓄積と利活用を進めることが重要です。がんを恐れることのない社会の実現を目標に、医療業界の最適化に寄与できればと考えています」(高木氏)

(山形麗、アイティメディア今野大一)

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