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東京藝大・箭内道彦教授に聞く 生成AI時代、広告クリエーターはどう受け止める?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月14日 10時37分

――コピックアワードの審査委員を引き受けた経緯は。

 昨年度のコピックアワード2022、2023の審査員を担当した同じ東京藝術大学の押元教授から「次は箭内先生お願いします」と内々に言われていました。つまり大学の業務の一環として引き受けたつもりだったのですが、いざ審査をしてみると、それを横に置いて、非常に面白い体験ができました。

 応募してきた絵を見ていると、どの絵も「好きで描いている」のだという作り手のパッションが伝わってきます。これは審査していて非常に楽しい経験でしたね。他の審査員の方々の視点もとても新鮮でした。

●本当はイラストレーターになりたかった

――箭内教授は藝大を卒業後、博報堂に入社しています。どんな経緯で広告代理店を選んだのでしょうか。

 今回のアワードの作品を見ていて、本当はイラストレーターになりたかった自分を思い出しました。僕は、イラストレーターになれなかった人生だったんです。僕が大学にいた1980年代は、グラフィック系のデザインの学生の多くがイラストレーターになりたかった時代でした。

 しかし、商品としての強さをオリジナリティーとして持っている絵を描けないとイラストレーターにはなれません。「自分にしか描けない絵はどんな絵なんだろう?」と大学在学中ずっと考えていました。何かを描いても、どこかの誰かの絵に似てしまう自分に対し「ああでもないこうでもない」と?(もが)いていましたね。

 イラストレーターになることができないことを思い知って、広告代理店に志望先を切り替えた経緯があります。僕は大学の4年間を、個性を探すことの呪縛から逃れられないまま終えました。自分の個性を見つけた周りの同級生たちがうらやましくて仕方がありませんでした。

 ただ今になってみると、自分の絵が結果として誰かの二番せんじになってしまうことにむしろ面白さを見いだしています。個性を無理やり見つけてきたものではない絵に、僕はとても魅力を感じるようになりました。コピックアワードへの応募作の中にも、そういう魅力のある作品が多かった印象です。

 コピックアワードの審査に携わって良かったと思うのは、この賞がプロのイラストレーターへの登竜門ではなく、今自分が好きだと思う絵を描いている人たちが胸を張り合う場所に立ち会えたことです。まさに初心に帰ることができる機会でした。

●絵を描く過程にこそ価値がある

――近年ではPCやタブレットによる作画が当たり前になり、手書きによるイラストが少なくなる一方です。さらに近年では生成AIによる描画も台頭してきています。箭内教授は生成AIの動きについてどのように見ていますか。

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