重いランドセルにさようなら 布製モデルが選ばれる理由と急成長の裏側
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月13日 6時10分
ラクサックの最大の特徴は、「ブックストラップ」だ。これは登山用バックパックを参考に開発したもので、重い教科書類を背中にしっかりと固定することで、より軽く感じられる効果があるという。「重い荷物は体の近く、かつ高い位置に固定する」という登山の原則を応用した。
「現在の小学生が抱える問題は荷物の重さ。通学カバンを数百グラム軽くしても実感としてはあまり変わらない」と、学校教育事業部の山田樹さんは説明する。そこで同社は、カバン本体の軽量化以上に「軽く感じる構造」にこだわった。
サイズ展開においても、容量はほとんど変えず、肩ベルトの設計を変えることで、成長に合わせてより軽く感じられるよう工夫している。
改良を重ねる中で、容量を増やし、機能を追加した「ラクサックジュニアプラス」(1万6500円)を発売。100サイズ、小サイズ、大サイズの3モデルを展開し、最小の100サイズは身長95~120センチの小柄な子ども向けとして、今年2月に追加した。高い位置で背負えるよう肩ベルトの位置を変更するなど、工夫を重ねた。
低学年の子どもに大きめサイズを選ぶケースも多いが、「体に合わないサイズだと、むしろ重く感じることがある。成長に合わせて靴を買い替えるように、カバンも気軽に買い替えていただきたい」と佐野さんは語る。
●「1週間の無料貸出」で軽さを体感
従来の革製ランドセルが6年間の使用を前提とした耐久設計であるのに対し、同社は3年を目安に買い替えを推奨している。成長に合わせたサイズ変更と、使用期間を限定して価格を抑えながら必要な強度を確保するための提案だが、実際には3年以上使用されている例もあるという。
また、商品を納得して選んでもらうため、1週間の無料貸出サービスも提供している。実際の通学時に使用できるほか、学校で周囲の反応も確認できる点が評価されており、同サービスを利用した約半数が購入に至っている。
「当初は3割程度の購入を見込んでいたため、予想以上の結果。利用者からは軽さを体感できたという声が最も多い」(山田さん)
ラクサックジュニアは、発売から毎年150%前後の成長率で販売数を伸ばしている。認知度の向上に加え、イオンやニトリなど大手企業参入による布製ランドセル市場の拡大が要因として挙げられる。
●新たな選択肢として定着へ
小学生の通学カバンにおける割合は、従来の革製ランドセルが8割程度を占めているが、布製ランドセルの利用率も少しずつ増えてきた。さらに、革製ランドセルの平均価格が5万円台に対し、布製ランドセルは1万~2万円台で展開されるなど、価格面でも選択肢は広がった。
一方で、参入企業が増えたことで、何を基準に選べばいいのか迷うという声もある。最近は、小学校入学1カ月でランドセルからラクサックに買い替えたいといった相談が寄せられることもあるそうだ。
今後の課題は、保護者に子どもの体への負担を考慮した通学カバンの選び方をいかに提案していくかだ。「これまでのランドセル選びでは、色やブランド、金額が主な基準とされてきた。私たちは子どもの体への負担という新しい選択基準を提案していきたい」(佐野さん)
子どもたちは今も重い荷物を持ち歩かざるを得ない状況が続いている。佐野さんは「メーカーとしてできることは、製品を通じて社会課題を提起し続けること」と語る。布製ランドセルという選択肢が、最終的には保護者の意識を変え、行政の仕組みも変えていく。そんな期待を込めて、同社は健康的な重さでの通学の実現を目指す。
(カワブチカズキ)
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