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巨大エンタメ企業に潜んでいた“死角”――ソニーのKADOKAWA買収は外資牽制の一手になるか

ITmedia NEWS / 2024年11月29日 12時19分

 川上氏が近年力を入れる教育事業(N高・ZEN大学等)や、祖業であるCGM「ニコニコ動画」はどうか。ソニー吉田CEOが経営方針として掲げる「人に近づく=ユーザーに近づくDirect to Consumer(DTC)サービスとクリエイターに近づくコンテンツIPの強化」との親和性は高そうだが、数土氏はこちらも買収を目指すのであれば主眼にはないのではないかという。

 「ソニーは近年、金融・保険事業の切り離しによる株式価値の向上を迫られる場面もありました。そんな彼らが新たに非中核事業となる教育やコンシューマーメディアを積極的に抱え込むことは望まないでしょう」(数土氏)。企業文化が大きく異なる両社が完全に統合されるということも考えにくく、仮に買収が成立したあともグループ内企業として一定の独自性を保ちながら運営されることになる、と見るのが妥当だ。

●海外から買われる日本エンタメ企業の未来

 割安な日本企業の株を海外資本が買う動きはKADOKAWAに限った話ではない。セブンイレブンを運営するセブン&アイ・ホールディングスがカナダ流通大手から買収提案を受けていることは繰り返し報道されているが、エンタメ企業に対しても同様にあまり一般紙では報道されない買収、資本参加が相当数行われている。

中国テンセント・ネットイースによる主な動き

テンセント

・マーベラスに49%出資(2020年5月)

・プラチナゲームズと資本提携(2020年10月)

・Wake Up Interactive買収(2021年11月)

・KADOKAWAに300億円出資/子会社がフロムの一部株式取得(2022年9月)

・ビジュアルアーツを買収(2023年7月)

ネットイース

・ANICIブランドでアニメ投資を推進(2020年6月設立)

・サテライトと資本業務提携(2020年10月)

・グラス・ホッパー・マニュファクチュアを傘下に(2021年5月)

・名越スタジオを設立(2022年1月)

 中国IT大手テンセント、ネットイースによるこれらの動きは、双方にメリットのある友好的なものと受止められているが、2024年7月にシンガポールの投資会社による買収提案(TOB)が却下された東北新社の例を挙げ、数土氏はエンタメ企業においても株主、ひいては経営体制の安定の重要性を指摘する。

 「創業一族とその関係者が過半数の株式を保有している東北新社は、TOBに対して企業価値・株式価値の向上が見込めないという判断のもと、それを拒否することもできました。これまで日本のアニメ・ゲームなどのエンタメ企業は、どちらかというと市場では『マニアック』な存在で、海外投資家からの注目を集めてこなかった。その状況が近年急速にかわったわけですが、多くの企業で資本構成における備えが取れてこなかったということでもあります」(数土氏)

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