[文谷数重]【南沙における米中対立は日本の利益】~東シナ海安定化のチャンス~
Japan In-depth / 2015年6月3日 18時0分
■ 日本はどうすべきか
日本は、この状況でどのように振る舞うべきなのだろうか?
まず認識すべきは、日本にとって南シナ海や南沙は死活的な価値はもたないということだ。南シナ海はシーレーンではあるが、迂回は可能であり海上輸送で深刻な問題は発生しない。また南沙の領土問題にも関与すべき立場にはない。岩礁群がどこの国の所有であっても日本の知ったことではない。(このあたりは『軍事研究』2015.3での筆者記事を御覧いただければありがたい)
むしろ、南沙や南シナ海が炎上で利益を得る立場にある。中国が南沙で足を取られれば、日中のゲームでは中国側は強く出られなくなるためだ。日本としては中国に南シナ海に出てもらい、関係国と衝突してもらったほうが都合がよい。
この点からすれば、対中対立を関係国や米国にアウトソーシングさせる手法もありえるのではないか。日本は中国を非難するよりも、問題に対して中立の顔をする。そして緊張緩和を図ることで中国を南に進ませ、日本が利益を取るアイデアもあるだろう。例えば、尖閣や東シナ海での緊張緩和をすることで東シナ海は安定化していると判断させられるかもしれない。
具体的には、尖閣警備レベルについて、海保巡視船の数を、接近してきた中国公船+1隻に止め、従来と比較して離隔距離を2倍以上とすることは緊張緩和のシグナルとなるだろう。
また、中国海空軍の列島線通過時でのコメントについて、国際法に則った権利であり問題視すべきものではないといった言わずもがなの発言を加えることである。スクランブル他での接近距離も多少手加減すれば、これもシグナルとなる。
実際に中国にとっての核心的利益は南シナ海であり、東シナ海ではない。中国は東シナ海が安定化すれば、その力を南シナ海に注ぎ込む。その結果、南シナ海が一度ホットな状態となれば、中国は手一杯となる。死活的利益ではない東シナ海方面への進出は優先順位を失い、対日軟化も期待できるのではないか。
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