[横江公美]【仕事を持つファーストレディ、安倍昭恵さん】~外交の舞台における安倍夫人のアピール望む~
Japan In-depth / 2015年6月6日 23時0分
通常、「保守本流」という自ら名乗る男性には、専業主婦優位主義の傾向がある。一方、西欧のリーダーシップを観察すると、最近のアメリカ大統領もイギリスの首相も、彼らの妻は、彼らと同等またはそれ以上のキャリアを持つ女性たちだ。
この傾向は、アメリカではヒラリーを妻に持つクリントン大統領が1993年に大統領になって以来、続いている。ローラ・ブッシュ夫人は図書館司書、チェイニー副大統領の夫人に至っては文学博士で司会者、研究員という経歴を持つ。ミシェル・オバマ夫人は、オバマが大統領になるまでは明らかに夫以上の経歴を持つ。
イギリスでは、1997年に登場したトニー・ブレア首相からこの傾向は続いている。イギリスでは1970年代にマーガレット・サッチャー首相が誕生しているほどだから、さらに先を進んでいる、と言えるほどだ。
このことを比べても、日本の男女に関する意識は遅れている、と思っていたら、ふと、私の認識不足であることに気が付いた。安倍昭恵夫人はれっきとしたキャリア女性だったのである。賛否両論はあるようだが、今もUZUという居酒屋の経営を続けている。しかも、聞くところによると、この居酒屋は黒字経営だという。
昭恵夫人は、政治家の妻として山口の選挙区を守り、伝統的に“正しい”政治家の妻であったが、安倍首相が誕生する総選挙の直前の2012年10月、突然、神田に山口県の郷土料理の居酒屋をオープンした。夫は、反対だったことは知られているが、じつは、彼女なりに、米英のファースト・レディの標準を意識した、第二次安倍政権誕生の準備だったとも考えられる。
靖国参拝、数々の歴史に関する発言のため、安倍首相は修正主義史観ではないかという懸念の目を向けられている。修正主義史観者と言われる人の共通するイメージは男尊女卑傾向である。アジア助成基金で償い事業をし、アメリカ政府も「終わった」と発言する従軍慰安婦を取り上げ、再評価を促そうとする動きは、まさに、このイメージと直結する。ゴールデン・ウィークのアメリカ訪問では、連邦議会での演説を聞くと、修正主義史観のラベルをはがすことが一つの目的だったことは明らかである。
昭恵夫人が、夫と日本のイメージを向上させるために、首相夫人になる直前に居酒屋をオープンさせたとしたら、かなりのレベルの戦略家である。たまたまだとしたら、驚くべきセンスである。
とりわけ外交の舞台では、キャリア女性としての昭恵夫人をもっとアピールしたら良いのではないか、と、「パブリック・ディプロマシー「世論の時代」の外交戦略」(PHP出版)の著者の一人として思うところである。
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