[文谷数重]【ケネディ・翁長会談は無駄ではない】〜翁長氏、プレイヤーとして急浮上?〜
Japan In-depth / 2015年6月21日 19時0分
果たして、けんもほろろな対応だったのか? 翁長知事は米政府関係者への面会を続けている。先月末からのワシントン訪問につづいて先日、ケネディ大使とも会談をもった。そこで普天間・辺野古の非理を訴えているという。
だが、米関係者は色よい返事を与えていない。これは、米国政府関係者は、当座は日本政府の面子を立てなければならないためだ。翁長知事と面会しても「辺野古移設が解決策」としか言えない。特に、ワシントンの安全保障サイドはそういう。日本の防衛サイドと密接な関係にあるからだ。今回も「ケネディ大使は、現行の移設計画が唯一の解決策だという考えを示した」(NHK)、「[辺野古]移設計画は普天間基地の継続的な利用を避けることにつながり、運用面、政治面、財政面および戦略的な懸念に対する唯一の解決策だという考えを示した」(NHK)と述べたという。このあたりから、米側は沖縄県の主張に耳を傾けていないように見えるかもしれない。
■ 翁長知事は米国も無視できない
しかし、注視すべきは翁長知事に対して、関係者も大使も時間をとって対応したことでだ。ケネディ大使は40分対応し、翁長知事の主張を聞いている。これは、翁長知事は米側にとってもプレイヤーとして無視できないことを示している。県民から圧倒的な支持を得た首長であり、政府との対立を辞せず、常に工事を止める力を蓄えつつある存在である。前知事や、従来の関係者といった有象無象のアクターとは異なっている。会わないことはできないし、辺野古の問題化も無視できないし、それに対してコメントをしなければならない。翁長知事が米側にもプレイヤーとして認識され、取り扱われたのである。それだけでも成果といえる。
■ 現実的な交渉者
さらに、翁長知事は米側には現実的な交渉者としての印象を与えることに成功しているのではないか? 翁長知事は、基地への絶対的反対者として振る舞ってはいない。もともと翁長知事は、日米安保の必要性は十二分に理解していると公言している点である。今回の訪問での発言も、対象は普天間−辺野古に限定されている。要は「海兵隊だけをどうにかしてくれ」と知事は言っている。
実際に、訪米や、大使面会でも、翁長知事は米空軍・嘉手納について言及していない。つまり、嘉手納を追い出すつもりはないといったシグナルを米国に与え続けているのである。この点で、必要あれば交渉すべき相手としての認識は、むしろ広まっているようにも見えるのである。
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