[古森義久]【朝日新聞のレッテル語法に抗議する】~安倍首相の“レッテル貼り批判”の批判を読んで~
Japan In-depth / 2015年6月22日 7時0分
朝日新聞6月21日朝刊に「レッテル貼り 首相が警戒 そのワケは」という見出しの記事があるのを一読して、思わず笑ってしまった。記事は安倍晋三首相が最近の国会答弁などで「レッテル貼りはやめてほしい」と述べることを批判的に取りあげた内容だった。だがレッテル言葉の多用乱発といえば、まさに朝日新聞自身が長年のチャンピオンだからだ。
レッテル貼り、つまりレッテル言葉の貼りつけとは「負の響きだけの意味不明な言葉で一方的に好ましくない決めつけをする」ことだといえる。私は朝日新聞のこのレッテル貼りの悪慣行をもう30年以上も前から実例をあげて指摘してきた。詳しくは『朝日新聞の大研究』(扶桑社文庫)、『なにがおかしいのか? 朝日新聞』(海竜社)、『朝日新聞は日本の「宝」である』(ビジネス社)などという自著で説明してきた。
実例をあげるならば、日本の防衛の重要性を説く側への「タカ派」「右寄り」、集団的自衛権の行使や憲法の改正を主張する側には「軍国主義志向」「戦前復帰」「いつか来た道」などというレッテルである。日本の防衛費の増加を主張することがなぜ「タカ」であり、「右翼」なのかの説明はない。あるのは響きの悪い単純な用語での決めつけである。
朝日新聞のもうちょっと手のこんだレッテル言葉としては「前のめり」という例がある。日米同盟を強化する。中国への抑止力を高める。そんな朝日新聞の主張に反する政策はみな「前のめり」となる。「前のめり」も「後のめり」もネガティブな響きだけの意味不明の表現である。
似たような範囲の表現では「ことさら」「やみくも」「必要以上に」「言いたてる」というのもあった。いずれも朝日新聞が反対する言動に浴びせる形容的な言葉なのだ。日米共同のミサイル防衛網の構想が進みそうになると、朝日新聞は「ミサイルごっこの仮想現実」とか「この高揚感が危ない」と表現を使って反対した。みな最初に悪の断定ありきのレッテル言葉である。
朝日新聞は小泉純一郎首相の政策を評して「ファシズムか『小泉酔い』か」という見出しでおちょくった。小泉氏をヒトラーになぞらえる露骨なレッテル貼り語法だった。
今回の朝日新聞の記事は安倍首相がレッテル貼りへの批判を述べることを逆に批判して、「説明不足」だと非難する。この「説明不足」という点こそ朝日新聞の年来のレッテル語法への抗議として強調したい。
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