【ギリシャ、困った時の歴史認識】~ギリシャ危機の真実1~
Japan In-depth / 2015年6月29日 18時0分
やはりギリシャは、見限られたようだ。日本時間の6月28日朝、ブリュッセルで開かれていたEU蔵相会議において、ギリシャに対する財政支援は、予定通り今月末=6月30日で打ち切ることを決定した。
これにより、月末が返済期限である16億ユーロ(約2200億円)が債務不履行になることは避けられない見通しとなってきてるが、その割に、ユーロ圏の諸国は深刻な危機感を抱いていないように見受けられる。
理由は大別して3点で、まず第1は、ギリシャの経済規模の小ささ。GDPが1800億ユーロほど(約2兆5000億円)で、これはフォルクスワーゲン社の総売上2020億ユーロ(2014年度実績)にも及ばない。
第2は、そもそもギリシャの財政赤字は、政治の構造的な欠陥によって生じたものであり、財政支援の効果が見込めない、という問題。具体的にどういうことかは、次回もう少し詳しく報告するが、客観的に見て、緊縮財政を求めるEUの側に理がある。
2010年から12年にかけて、ユーロ危機ということがしきりに喧伝された当時は、ポルトガル、イタリア、アイルランド、それにギリシャとスペインが、深刻な財政危機に苦しんでいた。頭文字をとってPIIGSと呼ばれた事を、ご記憶の向きも多いだろう。
この5カ国が将棋倒しのように破綻の連鎖を起こしたら、さすがにユーロもEUももたないだろう、と心配されたのだ。しかし5年ほどが経ってみて、ギリシャ以外の国々は、順当に経済を回復させてきた。ここでギリシャが財政破綻もしくはユーロから離脱という事態に陥っても、その影響は限定的なものにとどまる、というのが、今や投資家の間では常識になっている。
そして第3に、というより、これが最も本質的な理由だろう、と筆者が考えるのは、現在の、チプラス首相率いるギリシャ急進左派政権のふざけた態度だ。
今年1月25日の総選挙で誕生した政権だが、もともと緊縮財政反対をとなえ、EUなどにギリシャの債務を棒引きさせる、と公約していた。EUの側から見れば、まともな交渉相手と考えるに値しないのである。
現に3月には、第二次世界大戦におけるナチス・ドイツ軍による残虐行為を持ち出して、あらためて賠償金を取り立てるというトンデモ発言が飛び出した。筆者も個人的には、ナチスがしでかした事は、永遠に許されるべきではないと考えているが、いくらなんでも、このタイミングで歴史問題を持ち出して借金踏み倒しの口実にしようというのは、支持する気になれない。案の定、名指しされたドイツは「すでに解決済みだ」とにべもなかったし、他国からドイツのこの回答に対する非難の声も聞こえてこない。
ただ、ドイツがこういう態度に出られたのは、敗戦の結果、国が分断されるという苦難を受け容れつつ、誠実に謝罪と賠償を続けてきたからこそ、という点は、忘れてはならないだろう。どこかの国の首相が、戦争の歴史について見直す談話を発表するとかしないとか言ってるが、やることをやってない者が好き勝手なことを言っても、そりゃあ、受け容れられないって。
もうひとつ、どこかの国では、今のうちに消費税とかバンバン引き上げないと、日本が(あ、日本だって言っちゃった笑)ギリシャのようなる、とか言う人もいるが…この議論のどこがおかしいかも、次回以降、併せて見て行こう。
(この記事は【“ユーロ離脱辞さず”こそ、国民はNO?】~ギリシャ危機の真実 2~に続く。)
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