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[西村健]【どうなる?高齢者にとっての東京ライフ 1】①~東京都長期ビジョンを読み解く!その28〜

Japan In-depth / 2015年7月7日 7時0分

[西村健]【どうなる?高齢者にとっての東京ライフ 1】①~東京都長期ビジョンを読み解く!その28〜

ある日、駅で3つの光景に出くわした。有人改札で丁寧に頭を下げ、「恐れいりますが」と駅員に尋ねた初老の女性。自動切符売り場で画面操作に戸惑い続け、後ろにいたサラリーマンの苛立ちと厳しい視線も感じず、助けを求めずにただ狼狽えている杖を横に携えて小さな体をどうにか支える男性。駅の待合い椅子にただただ座り続け、ぼおっと何かを考え、視線が空を泳いでいる男性。

初老の女性が発した「恐れいりますが」の一言で見せた人生の先輩としての謙虚さに感じ入った。一方で、児童切符売り場で戸惑う男性には企業が進める(半ば強制する?)高度な情報機器の利用に頭も体もついていけない、そして、周りからも助けてもらえない、声をかけてもらえない孤独感がにじみ出ていた。まして、駅の待合椅子に座り続ける男性をおいておや・・・。超高齢化社会を実感せずにはいられない、日本のこうした日常の風景。超高齢化社会のこの現実は一体どう変化するのだろうか。

東京都の高齢者は2025年には327万人(2010年は264万人)になるという。政策指針12「高齢者が地域で安心して暮らせる社会の実現」や東京都高齢者保健福祉計画(平成27年度~平成29年度)の数値を見ると「大変な時期を迎える」「いったい社会はどうなるのか」との実感を改めて深く持った。

政策指針12には政策目標が明確に書かれている。特別養護老人ホームの整備、介護老人保健施設の整備、認知症高齢者グループホームの整備、サービス付き高齢者向け住宅等の整備などなど。

認知症に対しても認知症支援コーディネーターを区市町村に配置すること、介護人材の確保のための取り組み(トライアル雇用、介護キャリア段位制度、人材バンクシステムなど)など非常に評価できる記述が並ぶ。

2014年6月に実施された都民生活に関する世論調査では、特に都に力を入れて取り組んでもらいたい施策を選ぶという設問に対して、高齢者福祉は46.5%であり、防災対策、治安対策に続いて3番目の高さであった。さらに、次の設問である「具体的な要望施策」に対する回答として、介護保険サービスの質的向上、特別養護老人ホームの等施設サービスの充実、高齢者の健康づくりの順に並んでいる。

東京都の仕事ぶりには大変評価するが、長期ビジョンからは高齢者の声、気持ちや感情が読み取れないという印象を持った。高齢者の現状はどうなっているのか。

・65 歳以上の夫婦世帯は74.6%が持家、一方65 歳以上の単身世帯は52.8%が持家であること

・民間賃貸住宅の入居者制限を行っている家主は19.6%。うち40.6%が単身の高齢者は不可とし、 34.9%が高齢者のみの世帯は不可という入居制限

・65 歳以上の高齢犯罪者の犯罪者率(人口 10 万人当たりの検挙人員)は

平成元年から平成 18 年で3.8 倍の伸び(警察庁・警察政策研究センター及び慶應義塾大学・太田達也教授による共同研究「高齢犯罪者の特性と犯罪要因に関する調査」)

・保育園・幼稚園に対する相次ぐ高齢者からの「うるさい」というクレーム

私もつい先日まで知らなかった事実もあり、氷山の一角と考えられる現象もみられる。こうした高齢者が置かれた現実を見ないでただただ「福祉施策」を長期ビジョンに記載するというのは非常に残念である。問題の本質に向き合っているとは思えないからだ。

次回からは、東京都高齢者保健福祉計画を見ていこうと思う。

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