[Japan In-depthチャンネルニコ生公式放送リポート]【安保法制報道から考える「立憲主義の危機」は本当?】~日本報道検証機構代表楊井人文氏~
Japan In-depth / 2015年7月10日 8時17分
誤報検証サイト「GoHoo」コラボ企画。政府が今国会の最重要法案と位置付ける安全保障関連法案をめぐる報道について、日本報道検証機構の楊井人文氏が解説。
そもそも憲法9条と自衛隊とは…?弁護士としての立場から、安保法制の「違憲」「合憲」議論にも言及した。
「平和安全法制」をめぐる国会での議論に注目が集まるが、多くの日本人、とりわけ若い世代にとってはそもそも馴染みのない議論だ。サブMCの美季ちゃんは「戦争なんてないものだと思って育ってきた」と素直に口にする。安全保障を語る上で、今の憲法の持つ意義や価値を報道機関はどう伝えるべきか?
この問題を報じるにあたり、メディアで目にすることが増えたのが、「立憲主義」という言葉。特に東京新聞や朝日新聞では、この言葉が多く見られる。楊井氏は、この言葉が国家のルールであるかのように用いられていることに違和感を感じるという。新聞紙面で使用されている「立憲主義」とは、法に従って権力が行使されるべきであるという政治原則、つまり「憲法で国家権力を縛る」という意味合いだ。しかし、近代の立憲主義はもう少し広義で、個人の自由の保障と公共の利益の両立についても定義されるものである。楊井氏は、あくまで「立憲主義」は一つの考え方にすぎないものであり、日本国憲法の実情を踏まえた議論の中で、安易に使用されるべきではない言葉だと指摘する。
憲法の中身を詳しく見ていく中で、今最もクローズアップされている「9条」についておさらいする。楊井氏は第2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」という部分と自衛隊の関係について、「説明がつかない。『戦力』ではないというのは、まやかしだ」とした。更に、9条に関しては従来から違憲論が多数だったのが現実で、「普通の読み方をすれば説明がつかないので『解釈』というものが出てくる」と続けた。
こうしたことを踏まえると、立憲主義を「国家権力を法で縛らないと戦争になる」という文脈で使用するメディアへの違和感が強まる。そもそも自衛隊は解釈によって合憲化されてきたことを十分に認識すべきであり、「集団的自衛権は憲法から導き出すことは出来ない」と疑問を呈した。
そして安保法制をめぐる議論に、大きなインパクトを与えたのが、先般の衆院憲法審査会である。安全保障関連法案について、3人の専門家が「憲法違反だ」とした。そのうちの1人早稲田大学の長谷部教授(自公推薦)は、そもそも違憲の声が多い憲法学者の中にあって異端とも言える「合憲派」だったにも関わらずだ。
今回も、番組ではアンケートを実施。「安保法制を成立させるべきか?」という問いに対しては、YESが50%、 NOが50%で、意見は真っ二つに割れた。
今後、我が国の安全保障をどうしていくべきなのか?極めて重要なこの問題にも関わらず、国会では、漠然とした議論が続いている。国民ひとりひとりも、知る努力、考える努力をしない限りは、圧倒的な数の論理だけで物事は進んでしまうだろう。
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