[久峨喜美子] 【ギリシャ危機、暗い見通し】~次は英のEU離脱問題~
Japan In-depth / 2015年7月14日 11時0分
つたない仏語を駆使しながら、エクサンプロバンスからマルセイユ、そしてオランジュへと旅を続けている。人々はサマードレスやショートパンツで現地のラベンダーの香り漂うワインやオリーブを楽しむ。緑豊かな、そして柔らかな木漏れ日の中で、約100年前セザンヌがどのように暮らし、数多くの風景画を残したのかと思いを馳せる。こうした南仏を舞台とした夏のクラッシック音楽祭巡りもオランジュで催される歌劇カルメンで見納め。オランジュでの野外オペラは南仏の夏の風物詩の一つでもあり、エクサンからオランジュへと向かう車窓から広大な地中海を眺めながら心躍る。
こうした歴史と文化の豊かな観光地を見ていると、しかしながらどうしても現在のギリシャ事情を憂いざるを得ない。国内総生産(GDP)の15%を占める観光業は、ギリシャ経済の生命線と言っても過言ではない。1.6ビリオンユーロ(日本円で約2,100億円)の負債を返済期限までに返済できなかったことで、国際通貨基金(IMF)からは三行半を突きつけられ、メディアはこぞってギリシャのユーロ圏離脱の可能性について書き立てている。人々は銀行に押し掛け、一日60ユーロまでと定められた現金引き落としのために銀行窓口に並ぶ。メディアの映像の中で、腰砕けになり泣いている年老いた顧客の姿が流れると本当に胸が痛くなるばかりだ。
ギリシャ危機に関して、今月7日にはユンケル欧州委員長、独メルケル首相、仏オランド大統領、そしてチプラス首相による4首脳会談が行われたが、経済危機打開に向けてまだ望みありとしたものの、それにはチプラス政権による早急な打開策が必須であると、Grexit(ギリシャ離脱)か否かの最終決定までに実質的5日間の猶予を与えた。13日早朝4首脳による17時間による協議を終え、ギリシャは3度目のベールアウトに合意し、その代わりに負債返済と銀行再建に向けて税金の引き上げや年金の削減、国有地の売却を行うことで合意を得たという。しかしThe New York Timesも指摘している通り、これではまるで急場をしのぐためにガレッジセールを開くのと同じだ。今後の見通しは暗い。
ギリシャ危機に関して、特にイギリスの経済学者等は冷ややかな視線を注ぐ。ギリシャが今後どれほど公共サービスを削減し国民に税金を課せようと、この負債を当面完済する事はできない、というのが彼らの見解である。その事実を直視することなく、実質的にEU経済政策の政策決定者であるドイツが完済を巡ってプレッシャーをかけ続けるのは、敢えてギリシャをうやむやに罰しているとしか言いようがない、と知識人等はインディペンデント紙 (The Independent)の中で語っている。一方でドイツは、EUのギリシャへの圧力はユーロ圏の景気回復にとって必要不可欠であると固辞する。
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