[久峨喜美子] 【ギリシャ危機、暗い見通し】~次は英のEU離脱問題~
Japan In-depth / 2015年7月14日 11時0分
こうしたジョン・スチュアート・ミルの功利主義的な立場に立つアングロ・サクソン対カント的な思考を持つ仏独を軸としたヨーロッパ的な考え方の相違は、2001年の米国テロに端を発したイラク戦争を巡る対立を思い起こさせる。この哲学的な相違について、ネオコンの代表的論者であるロバート・ケーガンはOf Paradise and Power: America and Europe in the New World Order (2003)の中で仏独等を金星人、英米を火星から来た人々と呼び、簡潔にそのファンダメンタルな相違について記述している。
この数々の歴史的な意見の齟齬を鑑みれば、イギリスのEU離脱の可能性は何も驚くべき事ではない。もっとも英キャメロン首相が独メルケル首相等の顔色をうかがいながら今のところEU残留の姿勢を保持しているところを見ると、英国がこの危機によって差し迫ってEUを離脱することはなさそうである。現にキャメロン首相は2017年末までにEU残留か否かをかけたレファレンダム(国民投票)を行うと、最終的な採決を延期している。しかしながらこのギリシャ危機と同時に、今後イギリスがEUに対してどのような姿勢を採るのかという点は、ヨーロッパのパワーバランスに大きく影響していくことは間違いないであろう。
ところで歌劇カルメンは、思っていた以上に素晴らしいものだった。風が思いのほか強く、アリーナの石畳の椅子に隣客としがみつきながらその歌声の美しさに酔いしれる。現在世界で最も人気のテナリストの一人、ヨナス・カウフマンの公演をこんなに小さな街の野外劇場で楽しめるとは思ってもいなかった。オランジュはそれだけ歴史深い、文化と音楽溢れる場所だということであろう。
エクサンプロバンスやオランジュのみでなく、ヨーロッパにはこうした小さな街や村々が点在している。ギリシャの各島々もその一つであろう。こうした街は、ギリシャのそれと同じく観光で経済のほとんどが成り立っている。この先何十年、何百年といかなる不況をかいくぐり、この美しい文化の源が生き延びる事をただただ願って、この地を後にした。
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