[古森義久]【統合幕僚長、中国人記者の挑発を一蹴】〜安保法制の目的は「日米同盟の強化」〜
Japan In-depth / 2015年7月19日 23時0分
ワシントンでの報道活動の楽しみの一つは、日本でなら簡単には会えない日本各界の枢要人物に頻繁に接する機会があることだ。ついこの7月16日には自衛隊の制服組のトップの河野克俊統合幕僚長の話しを聞くことができた。河野幕僚長が日本の安保法制に関する中国人記者の誇大な非難の質問をさらりと切り返したのがとくに印象的だった。
河野幕僚長は米軍のマーチン・デンプシー統合参謀本部議長の招待で7月12日からアメリカを公式訪問し、16日にはワシントンの大手研究機関の戦略国際問題研究所(CSIS)で講演した。「日米同盟の推移と前進」というタイトルで、日本を囲む安全保障状況が主体、河野幕僚長は北朝鮮の核とミサイルの脅威や中国の大規模な軍拡による日本への重圧について明確に語り、同盟国のアメリカとの連携強化についても説明した。
司会役は元国務副長官のリチャード・アーミテージ氏が務め、質疑応答を進めた。その過程で中国の「上海メディア・グループ」の所属を名乗る若い女性が事前に紙に書いた質問を読みあげた。
「安倍政権の安保法制案の真の目的は中国脅威論をあおり立て、日本の軍事活動への制約をなくして、アメリカの支配のカセをも取り除くことだという認識にあなたは同意しますか」
中国政府の主張を一応、質問の形にしたプロパガンダ的な発言だった。しかも英語がわかりにくく、河野氏についていた通訳も最初は意味が理解できず、繰り返しを求めたほどだった。ワシントンでは中国や韓国のメディアが自国の政府を代弁するようなこの種の質問や発言をすることが多いのである。
さてこの質問に対し河野幕僚長は次のようにすぐ答えたのだった。
「いえ、同意しません。安保法制案はいま審議中なので、コメントを控えるほうがよいのでしょうが、この法制の理由は日米同盟を強化することです」
安保法制の目的はただ一つ、日米同盟を強くすることにある、という回答なのだ。この簡潔な答えに中国人記者も黙ったままだった。しかしこの「質問」は日本の日米同盟強化策をなんとか阻止したいという中国政府の本音を期せずしてあらわにしていた。こと日本の安全保障に関しては中国の反対することはだいたいは日本にとってプラスになるというのが近年の現実だといえる。日米共同のミサイル防衛などはその典型だった。
しかし中国側の政治的意図の露骨なこうした発言をさらりとかわし、ごく簡単に反撃までを発した河野幕僚長のまさに対応はあざやかだったといえよう。
※トップ画像:出典 統合幕僚監部HP
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「日米蜜月」アピールと裏腹に進む「外交の新潮流」 内政に翻弄される岸田首相の「次なる外交課題」
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 8時30分
-
米が日本との防衛協力を大幅拡大 「統合抑止」へ貢献期待 バイデン氏「重要なステップ」
産経ニュース / 2024年4月11日 16時20分
-
日本人が知らない南シナ海の「いまそこにある危機」 日米比首脳会談で試される同盟への覚悟
東洋経済オンライン / 2024年4月8日 16時0分
-
米国、在日米軍の機能強化へ指揮統制見直し 自衛隊と連携する統合任務部隊を設置
産経ニュース / 2024年4月7日 18時36分
-
もしトランプ政権になればその3 日本への高い評価
Japan In-depth / 2024年3月22日 11時0分
ランキング
-
1「外国人嫌悪的」 鉄鋼保護めぐるバイデン氏発言に中国反発
AFPBB News / 2024年4月18日 20時1分
-
2米英両政府がイランへの追加制裁発表、バイデン氏「我々は一丸となって行動する」
読売新聞 / 2024年4月19日 0時7分
-
3ロシア情報機関に協力疑い逮捕 ウクライナ大統領暗殺計画
共同通信 / 2024年4月19日 7時20分
-
4イスラエルがイランの施設に対しミサイル攻撃か
日テレNEWS NNN / 2024年4月19日 11時6分
-
5核施設攻撃すれば同様の反撃 イラン、イスラエルに警告
AFPBB News / 2024年4月19日 11時51分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください