[岩田太郎]【国民の保護を阻む「憲法崇拝」の日米比較】~米・TV生中継射殺事件~
Japan In-depth / 2015年8月28日 23時0分
米バージニア州で8月26日朝、ローカル局の生中継をするアリソン・パーカー記者(享年24)とアダム・ウォード・カメラマン(享年27)が、視聴者の目前で、かつての同僚であるベスター・リー・フラナガン容疑者(享年41)が合法的に入手した銃により射殺された事件で、再び銃規制議論が起こっている。
パーカー記者の父であるアンディ氏(62)は、「『正気を失った』(フラナガン容疑者のような)者には銃を入手させない銃規制」を訴え、運動に身を投じる覚悟を明らかにした。しかし同時に、市民が銃を含む武器を所持する自由を保障した米憲法修正第2条を「支持する」とも語り、注目されている。
米国では、「米憲法修正第2条が神聖視されるあまり、米社会全体が銃規制に関して現実的な対応をとれず、思考停止状態に陥っている」とする論調がある。
これは、日本国憲法第9条が自衛隊・日米安保条約の存在や国際情勢の急変で死文化しているのに、それが存在することが護憲派・改憲派双方の自己矛盾と欺瞞を生み、現実的な安全保障論議を妨げてきた、とする主張に通じるものがある。「人の命のための憲法」が「憲法の命のための人」にならないために、どうするべきかという同じ課題が日米両国で、違う文脈において焦点になっている。
『ロサンゼルス・タイムズ』紙のマイケル・マクゴー記者は、20人の幼い子供を含む26人が犠牲になった2012年12月のコネチカット州サンディフック小学校銃乱射事件や、32名が射殺された2007年4月のバージニア工科大学銃乱射事件など悲惨な事件が止まず、「憲法修正第2条そのものを完全に廃止すれば、米連邦最高裁判所が銃の所持が合憲だとする判断を繰り返し、銃規制を阻むことができなくなる」との声が米国で高まっていることを紹介。
しかしマクゴー記者は、憲法修正第2条は個人の権利の概念と密接に結びついており、修正第2条が取り去られることは、多くの米国人にとって個人の権利や自由を奪われる第一歩と同義に見なされることを指摘し、「保守派・リベラル派双方の支持が得にくいので、廃止されることはない」との見解を表明した。
修正第2条は、憲法の宗教的な崇拝という、神聖にして侵すべからざる権利の代表だと同記者は論じている。神聖な権利、いや利権のためには、人がどれだけ銃の犠牲になっても構わないというわけだ。憲法が人のために存在するのではなく、人が憲法のために存在する本末転倒が起こっているのである。
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