[宮家邦彦]【アメリカ・対シリア政策破たん】~露・シリア空爆で中東不安定化加速~
Japan In-depth / 2015年10月6日 11時0分
先週9月30日から遂にロシアがシリアで空爆を開始した。10月3日には露国防省がイスラム国の「首都」ラッカで住宅地域内の戦闘指揮所を破壊したと発表。ロシア大統領は目的がイスラム国攻撃だと力説するが、これを信ずる者はいないだろう。
米国務長官はイスラム国以外へのロシアによる空爆に「重大な懸念」を表明したそうだが、今更何を言うのだろうか。明らかなことは、ロシアが軍事力を使ってでもアサド政権を守る覚悟を示したことと、米国の対シリア政策が破綻したということだ。
ロシアによる軍事行動は中東地域の軍事バランスを変えるもの。戦略的には看過できない行為だが、クレムリンはとことんやるだろう。露議会・市民にシリア空爆の重大さなど分かる筈もない。中東レバントは新たな不安定要因を抱えることになった。
今週東京のハイライトは内閣改造だが、報道によれば小規模、10人程度の入れ替えだという。大臣待望組が70人もいるそうだから、確率は七分の一、残りの60人が不満を抱えることになる。不満分子が増えるだけだろうが、実にご苦労様なことだ。
〇欧州・ロシア
5日から欧州、特にユーロ圏諸国の財務、社会労働、交通、司法の各大臣が集まり会合を開くという。主要議題が難民問題であることは容易に想像がつく。中東情勢が悪化したからだって?いやいや、むしろ欧州の凋落を象徴する事件ではないのか。
〇東アジア・大洋州
目立たないが10月5-8日にJETROがイランにミッションを派遣する。これまた目立たないが6-9日に台湾民進党の蔡英文主席が訪日する。報道によれば同主席は6日に東京入りし、午後は日華議員懇談会を訪問する。
続いて7日には山口県で村岡知事と安倍首相の実弟である岸信夫衆議院議員に面会、8日は民主党本部を訪問し、9日には自民党本部を訪問して帰国するらしい。日本側は適切な対応だが、中国側は蔡主席訪日に「断固反対する」そうだ。
〇中東・アフリカ
今週はトルコ大統領がフランス、ベルギー、日本を訪問する。ロシアの対シリア空爆以外で気になるのはイスラエルだ。5日には同国軍がパレスチナ人少年を射殺するなど、西岸地区で治安部隊とパレスチナ人の衝突が広がっているが、実に困ったことだ。
〇アメリカ両大陸
米国務長官が10月5日、6日にチリとハイチを、6-7日には米商務長官がキューバをそれぞれ訪問する。米大統領選は星雲状態が続く。候補者が多すぎる共和党と「独走ヒラリー」が脱落しかねない民主党、いずれも円満決着は見えてこない。
〇インド亜大陸
10月4-6日にドイツ首相が、8-11日にはスリランカ大統領がそれぞれ訪印する。また、6日にはスリランカ首相が訪日する。
今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
(トップ写真はeverystockphotoより引用、photographer profile / nordique)
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