1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

衝撃!「水素社会」は来ない その1

Japan In-depth / 2016年2月11日 21時53分

衝撃!「水素社会」は来ない その1


文谷数重(軍事専門誌ライター)


水素社会は来るのだろうか?

次世代エネルギーとして水素が注目されている。水素は化石燃料とは異なりクリーンなエネルギーであるためだ。

その利点を活かすため、自動車等への利用が進められている。トヨタの燃料電池自動車ミライやバス、フォークリフト等の荷役機械、建物等の固定式燃料電池への応用であり、供給のための水素ステーションの建設である。

だが、水素利用はペイするのだろうか?

水素には輸送や貯蔵に問題がある。そのコストを考慮すれば、水素をそのまま使うよりも石油化学の原料に使い、ガソリンや軽油といった液体燃料に変えて使ったほうがよい。

■ 水素利用の発達

水素利用が話題となっている。

東京都はオリンピックを期に水素燃料電池の利用を進めようとしている。これはスマートジャパン「浄水場の水素を燃料電池車に、東京の水道システムがオリンピックで進化」や、毎日新聞「『水素ステーション』整備、都が急ぐ 『東京五輪を起爆剤に』」で報道されているとおりである。

また、それ以外の地方でも活用が模索されている。神戸市は「水素サプライチェーン構築実証事業の推進」により輸入水素の扱いを狙っており、山口県周南市も「周南市水素利活用構想」で水素供給網整備を計画している。

これは新エネルギーとしての水素に期待したものだ。従来の化石燃料とは異なり、消費しても無公害であり、自然エネルギーや廃棄物からの製造よりエコといった印象をうけてのものである。

水素は燃料電池で使えば完全無公害である。燃料の水素と大気中の酸素を使うことで発電し、自動車や建物の電気を賄おうとするものだが、水しか排出しないので公害要素はない。

燃焼させても無公害に近い。化石燃料やバイオ燃料とは異なり硫黄を含まないため硫黄酸化物SOXは発生せず、炭素も含まないので二酸化炭素やPM2.5のような炭素微粒子の問題もない。原理上は窒素系酸化物NOXの発生は考えられるが、ガスタービンでは抑制の目処もついている。

製造もエコの印象がある。水素はソーダ産業等での副産物で発生するものであり、将来的には余剰電力による電気分解や、廃棄物処理等の排熱を利用した熱分解で作る目論見もあるためだ。

だが、水素には輸送と貯蔵に困難がある。このため、水素社会は来ないとみてよい。

■ 輸送は困難

まず水素は輸送が困難である。水素は経済的な輸送ができない。

水素は軽く嵩張り、液化困難である。この点で輸送効率はガソリンや軽油、灯油に敵うものではなく、プロパンや天然ガスよりも劣る。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください