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Animeと韓流の差はどこにあったか 漫画アニメ立国論 その5

Japan In-depth / 2016年3月31日 15時42分

Animeと韓流の差はどこにあったか 漫画アニメ立国論 その5

林信吾(作家・ジャーナリスト)


「林信吾の西方見聞録」


スペインに語学留学した際、マドリードのアパートで、毎週土曜日の午前中はTVアニメ(以下anime。第一回参照)を見て過ごすことが多かった。一番のお気に入りは、Shin-Chan。『クレヨンしんちゃん』(臼井儀人・著 双葉社)のアニメ版で、スペイン語圏でもかなりの人気を博していたようだ。


日本では、さすがに見ていなかったが、語学初心者にとってanimeは心強い味方である。とりわけShin-chanは、日本の子供たちが主人公で、会話の内容自体が分かりやすい。しかも絵があるから、どういう状況でなにを話しているのか、すぐ把握できる。これが、語学の上達に実に有益なのだ。


たとえば、スペイン語学校の初級クラスでは、謝罪の表現としてPerdón(ペルドン)を教わった。字義通りには「許し」「寛容」といった意味で、要するに、ここは大目に見てください、といった表現であることは、後で辞書などを調べて知った。さらに後で知ったことだが、ちょっとすみません、くらいの感じで、普通に話しかける時にも使うのである。


ところがShin-chanを見ていると、父親(野原ひろし)が、息子(しんのすけ)のやることがあまりにひどいものだから、涙目になってLo siento mucho(ロ ・シェント・ムーチョ)と繰り返すシーンがよく出てくる。笑いながら、ああ、本当に深刻な謝罪の時はこう言うのか、と頭に入るわけだ。


逆に、ヨーロッパ諸国の子供たちが、animeを見て日本語や日本文化に興味を持つ例が増えている、その理由もよく分かる。


主人公は、年中悪さをして母親(野原みさえ)にしばかれるわけだが、そのシーンでは決まって「げんこつ」という文字と共に、命中する拳が大写しになる。読めなくとも、意味するところは分かるであろうが、


(あれは、なんと読むのだろう?)


と考えて、日本語に興味を持ってくれる子供が大勢いると思うと、大いに心強い。日本の子供は、みんなあんな風にお尻を出して踊るのが好きなのか、と思われては大いに困るが。


日本語版とスペイン語版とで、台詞の改編などはほとんどなかったようだが、固有名詞などは何点か変えられていた。


愛読者はご存じであろうが、主人公の野原家で飼われている犬の名は「シロ」である。しかしスペイン語版ではNevadoになっていた。積雪の意味である。これもこれで、スペイン語圏ではおそらく、白い犬だからと言ってBlanco(ブランコ。白)と名付ける発想がないのだろうな、と想像されるわけだ。


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