「死に至る病」と関西 その3
Japan In-depth / 2016年4月13日 10時0分
山口敦(産經新聞大阪本社 社会部次長)
「Osaka In-depth」
■唯一増加の滋賀県もすでに減少局面
京都府の人口は、261万140人で、前回より、2万5952人(1.0%)減った。
京都府の場合、全体の56%にあたる147万4570人が京都市民だ。県庁所在地の人口が全体の過半数を占める道府県は京都府しかなく、県庁所在地への一極集中が、全国で最も顕著な都道府県と言える。
その京都市は、人口の約1割を学生が占める学生の街として知られるが、平成25年に同志社大学の文系4学部の1、2年生が、京田辺市の京田辺キャンパスから京都市上京区の今出川キャンパスに移ったこともあり、前回調査時の22年に比べ、学生は約5400人増えた。
ただ、学生が占める割合が大きいためか、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す平成26年の合計特殊出生率をみると、京都府は1.24で、東京都の1.15に次いで3年連続で2番目に低い。そうした事情もあって、学生は増えたものの、京都市全体の人口は、前回調査から0.04%、555人増に止まっている。
一方、長期の低迷を脱し近年企業進出が相次ぐ関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)があり、大阪の通勤圏にもなっている木津川4.4%、京田辺4.4%、精華2.1%の増加で、これらの3市町で、計6796人の増となった。
滋賀県の人口は141万3184人。近畿2府4県のなかで唯一、前回調査時に比べ2407人(0.17%)の増加となった。しかし、県の推計人口では、平成25年12月1日現在の141万7499 人 がピークで、県は、5年に1度の国勢調査では増加したものの、人口は既に減少し始めているとみている。
『少子化の問題は、すでに多くの地方において、若年人口の減少により地域 経済の活力が奪われ、人口流出に拍車がかかるといった形で顕著に現われている。このままいけば近い将来、地方はその多くが消滅しかねず、その流れは確実に地方から都市部へと波及し、やがて国全体の活力を著しく低下させてしまうことになりかねない』
平成26年7月に全国知事会が取りまとめた少子化非常事態宣言はそんな書き出しで始まる。
「日本は死に至る病にかかっている」。全国知事会長として、宣言の取りまとめにもあたった京都府知事の山田啓二氏は、少子化の現状について、そんな表現で危機感をあらわにした。
非常事態宣言は、『次代を担う子ども達が将来に希望を持てなくなってしまった国には、もはや発展は望めない。直ちに、若い世代が希望を叶え、安心して結婚し子育てのできる環境整備に向けて、国・地方はもとより、地域社会や企業などが世代を超えて協力し、子育てをともに支え合う社会を築き上げていく手立てを早急に講じなければならない』としたうえで、『 今から直ちに取り組めば、将来の姿を変えていくことは十分に可能である』と訴える。
人口の動向は、地域の実情を如実に示す鏡のようなものだ。予想されていたこととはいえ、われわれは、現実の数字が人口減に向け、明確に反転したターニングポイントに立った。
日本全体が死に至る病にかかっているとすれば、地盤沈下が先行して進む関西の症状は、一歩進んでしまっていると言える。
まだ動ける余地がある以上、マンション前の老人像のように、じっとベンチに居ついてしまうわけにはいかない。今何ができるのか、何をすべきなのか。像の前を通るたびにそう考えるのだが、あせりばかりが募る。
*トップ画像:高層マンションそばのベンチに設置された老人像©山口敦
(「死に至る病」と関西 その1、「死に至る病」と関西 その2の続き。全3回)
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