危機感ない韓国 北朝鮮核実験に対し
Japan In-depth / 2016年4月26日 8時32分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年4月25日-5月1日)
今週の原稿は25日深夜ソウルのホテルで書いている。北九州市での講演の後、そのまま福岡空港から仁川に飛んだ。今回の韓国出張では当地の有力シンクタンク・アサン研究所の年次総会に参加する。米国のアジア村の連中が大勢集まるが、同時に中国に配慮した議題も取り上げられる。やれやれ、相変わらずだ。
空港からタクシーで夜のソウルに入る。ここも東京と同じ、夜遅くまで皆楽しそうに飲んでいる。米有力紙香港特派員の友人からメールで、「北朝鮮はいつ核実験をすると思うか、実行した場合、韓国はどう対応するか」と聞いてきた。タクシーの中で「恐らく何もしないだろう」と呟いた。とにかく危機感が感じられないのだ。
光輝く夜のソウルの街並みを見るたびに、この国はもう小さな戦争はできないだろうと確信する。海軍の哨戒艇が撃沈されようが、国境近くの島が砲撃されようが、韓国は全面戦争などする気はない、いや、できないのだ。当然だろう、1950年代とは異なり、今の韓国には失うものが多過ぎるのだから・・・。
前回はワシントンのSE(南東)地区が再開発され白人が移り住んだ話をしたが、昔住んでいたアフリカ系貧困層住人はもうそこには住めない。米国の貧富の格差の拡大を象徴する場所だが、ふと韓国ソウルにもそのような場所があるのではないかと思うようになった。
米国のダークサイドは、トランプの支持者、すなわち白人・男性・ブルーカラー・低学歴層が中心だと以前書いたが、ソウルにもLower Middle Class(中産階級の下)から下層階級の中に、米国の脱落組と同様「怒っている」人々がいるのではないかと推測した。その怒りの矛先が今回の総選挙で朴大統領に向かったのだろうか。ソウルの友人たちにそっと聞いてみよう。
〇欧州・ロシア
25日にオバマ大統領がロンドンからドイツに入る。同大統領は米アトランティック誌の最新号でサウジや英国に厳しいコメントをしたと報じられた。例えば、サウジを同盟国と扱うことを明らかに不快に感じていたとか、リビア・シリアでの外交的失敗は英首相の指導力不足にも原因があると考えた、といった具合だ。
何故そんなことをサウジや英国訪問の前にわざわざ言うのだろう。事実ならば、サウジ王族や英国政界が猛反発しても不思議ではない。サウジや英国は米国の友人ではなかったのか。一方で、メルケル首相は「オバマ大統領が尊敬する数少ない首脳の一人」だそうだ。やはり、オバマ大統領は「外交音痴」なのかもしれない。
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