「保育園落ちた」諸外国事情 日本の待機児童問題その6
Japan In-depth / 2016年5月1日 23時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
昨今のわが国における待機児童問題について見てきたが、この連載のコンセプトはヨーロッパをはじめとする諸外国の社会事情について語るもので、それゆえタイトルも「西方見聞録」となっている。
やはり「欧米諸国に待機児童問題は存在するのか」という視点を外すわけには行かないだろう。
結論から先に言うと、ドイツやオランダなど、ヨーロッパ諸国にも待機児童問題は存在する。韓国では「保育大乱」とまで言われるほど、この問題が深刻であると聞く。
総じて、経済活動が活発になり、かつ女性の社会進出が進むと、その反作用とでも言うべきか、仕事と子育ての両立に悩む母親が増える、という傾向はあるようだ。
また、日本の保育園や幼稚園には、給食やイベント(お遊戯会など)といった、海外ではほとんど例を見ない充実した保育環境があることも、知っておく必要があるだろう。
しかしながら、それだけでは済まされないデータもある。保育を含めた公教育に対する財政支出の割合を見ると、日本は3.5%だが、実はこれ、OECD(経済協力開発機構)34カ国中最下位なのだ。ちなみにベスト5はと言うと、1位がノルウェーの6.5%、ベルギーとアイスランドが同率2位で5.9%、4位がフィンランドの5.7%、5位が英国の5.2%となっている。
端的に、公教育に対する財政支出の割合が低いということは、各家庭の経済格差が、子供の教育格差に直結する度合いが高い、ということである。事実、わが国の大学進学率はおよそ56%だが、生活保護家庭や母子家庭では40%にも届いていない(2015年の統計)。
これは保育の問題にも反映していて、普通のサラリーマン家庭では、補助金が出ている認可保育所しか考えられないが、余裕のある家庭では、ベビーシッターを雇うなどの選択肢がある、ということになる。さらに言えば、シングルマザーなど、往々にして長時間勤務や夜の仕事をせねばならない人ほど、保育料や教育費の負担が大きくのしかかってくる。
このように述べてくると、ならばどうして、公教育に対する財政支出が充実しているヨーロッパ諸国にも待機児童問題が存在するのか、といった疑問を突きつけられそうだ。
と言っても、答えは割合簡単である。
ヨーロッパ諸国では一般的に、男性も育児休暇を取ることができるし、その間の収入が補填される制度もある。「にも関わらず」待機児童問題が存在するのは、子供を保育所に預けて夫婦共にフルタイムで働きたい、と考える人が多いからだ。
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