【大予測:中東】トランプ政権で混迷深まる
Japan In-depth / 2016年12月31日 19時0分
大野元裕(参議院議員)
1月20日、ドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任する。トランプ氏の政策には、ゆがめられ、且つ面白おかしく伝えられているものも多い。今月ワシントンを訪問し、トランプ氏に近い人たちから直接話を聞いてきたことをも踏まえ、次期政権の対中東政策を考えてみたい。
トランプ氏の大統領選挙勝利を受け、アラブ・イスラーム世界の報道機関や有識者の論調は悲観的である。それは、2009年にオバマ大統領がカイロで「新しい始まり」と題するスピーチを行ったころに見られた楽観的な雰囲気と正反対である。
オバマ政権の間に、米国は石油の中東依存度を大きく減少させ、国内のシェールガス・シェールオイルの開発を進めた。エネルギー・リスクから一定程度自由になった米国の対中東政策の選択はそれだけ増加し、化石燃料に関する規制撤廃推進を明言するトランプ氏の下、その選択の幅はますます拡大するであろう。または、トランプ氏の米国ファースト・非関与主義的な主張や米国が強く関与してきたシリア情勢に関しロシアの影響力伸長を認めるかのような姿勢は、米国を中東から遠ざけるようにも見せている。
10月22日にゲティスバーグで表明した「有権者との契約」に含まれているように、身元確認のできないテロ提供国からの受け入れ停止により、中東の問題がある国と「縁を切る」ことを考えているのかもしれない。しかしながら、トランプ政権が以下のような問題意識を表明している以上、中東への関与を継続せざるを得ず、複雑な方程式に巻き込まれていく可能性が高いのではないか。
(1) ISとシリア
シリアでは、アサド政権、西欧が支援してきた反体制派に加え、イスラーム国(IS)が三つ巴で抗争を繰り広げてきた。反体制派はすでに国内拠点を失い、アサド政権を支えてきたロシアとイランが影響力を拡大させている。トランプ氏は反体制派を守るための保護された地域樹立を支持してみたり、ロシアとの協力に言及したりと一貫した対シリア政策を示すことができずにいる。
その一方でトランプ氏の安全保障チームは、最優先で取り組むべき相手として北朝鮮と並んでISを挙げている。ティラーソン次期国務長官を含むトランプ政権は、シリアのIS無力化のために、ロシアとの対話を指向しているようだが、ロシアが現在進めているのは、イランとトルコとの間で米国抜きのシリア政策を協議し、アサド政権を助ける政策である。米国はアサド政権を受け入れ、反体制派が排除されることを許容するのか。さらには、アレッポ攻略戦の最前線でも役割を果たしてきたレバノンのヒズボッラーとイランを外すことは可能なのであろうか。
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