独立志向で四面楚歌に陥った台湾
Japan In-depth / 2017年7月7日 9時28分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・台湾蔡英文総統が就任して1年経過。
・独立施策のせいで台湾の政治・経済・軍事的独立性が低下。
・蔡英文総統により台湾独立性は損われた。
蔡英文総統就任から1年が経過した。女性初めての台湾指導者として知られている人物であり、昨年1月の選挙で国民党の朱立倫候補を破って昨年5月に台湾の総統となった。
だがその独立志向は実を結んでいない。独立志向の強い泛緑陣営の政治家であり、中国との関係を見直す立場でありながら、独立に向けた成果は挙げられていない。
それはなぜか?
独立施策そのものが独立を阻害する構造があるからだ。台湾は独立志向を表明することによりその独立性は損なわれるためだ。台湾が独立施策を進めることにより、台湾の政治的現状への支持は減少し、経済的余裕は失われ、軍事力強化は進まなくなる。それにより「事実上の独立」が損なわれるジレンマである。
■ 政治的独立性の低下
台湾の独立性低下は、政治的局面では外交立場の悪化として出現している。
蔡英文政権以降、台湾地区としての外交的自由度は低下した。これは国際機関での拒否にあらわれている。その対中強硬的立場や独立志向から蔡英文総統は世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)への出席が拒否された。
これは明らかな後退である。前総統の馬英九時代に達成したICAO出席やWHO招聘を無為にしたものだからだ。馬総統時代にはアジア太平洋経済協力(APEC)参加の寸前まで進んでいた。そこからすればその国際的地位の低落は大である。
中国との対話も悪化した。やはり馬総統時代に直接会談まで進めた関係が覆されたためだ。台湾海峡を挟んだ両岸関係とし大陸側指導者、台湾側指導者としていわゆる敵礼(対等立場の儀礼)関係まで進んでいた。だが、今の蔡政権は中国と本格交渉できるチャンネルもない。
さらに米国との関係も冷淡となったままだ。米中関係において台湾問題が独立を言い出すことは許されない仕組みである。台湾地区が独立を主張、あるいは自然独といわれる既に独立していると言い出すことは米国にとっても許せないことだ。そして、これはトランプ政権でも変化はない。
■ 経済的自立性の低下
また、蔡政権登場により経済的自立性も損なわれている。
外交的立場の悪化から経済的協力システムへの加入が不可能だからだ。例えば現政権下では環太平洋パートナーシップ(TPP:瀕死状態)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への加入ができない。
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