自分の“編集モデル”を見つめよう
Japan In-depth / 2017年8月11日 17時54分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
【まとめ】
・自分の認識を編集して意味づけすることを“編集モデル”と呼ぶ。
・自らの“編集モデル”に距離を取れなくなって一色に染まってしまうと「原理主義」に陥ってしまう。
・私たちはあくまで“編集モデル”を選んでそれを使っているという認識が大事。
私の本はよく自己啓発の領域に置かれることが多いので、自己啓発と言われる本を読んでみると、つまるところ”編集モデル”を提供するのが自己啓発なんだろうと思います。
自分にとって世界とは、実際に存在していて、それを自分が認識して、さらに好ましいとか好ましくないとか編集して意味づけする、という三段階で成り立っていると思います。
実際に存在しているものを変えるのはなかなか大変だし、変えられないものも多いのでアプローチが難しい。また認識はほぼ無意識の領域なのでこれも変えられない(変えられるという自己啓発書もありますが)。なので編集モデル領域でなんとかしましょうということになる。
よく努力か環境かという議論がスポーツではなされます。努力の世界は、全ての問題につべこべ言わず自分の努力でなんとかすべきだしなんとかなるはずだということかなと思います乱暴に言うと。
環境の世界は、人間がそうなるには、環境要因の方が大きい。多くのアスリートはまず才能を持って生まれ、才能を伸ばすような環境で育ち(トップアスリートは幼少期に競技環境があった確率が高い。また4,5,6,7月生まれが多い。兄弟で言えば真ん中が多い)、努力できるような自信を育む環境にいたから頑張れたのだ。だから頑張れない人は個人の努力の問題だけではないということかなと思います。
最近、“OUR KIDS”というアメリカの教育格差と経済格差がこの50年でいかに開いていったかという本を読みましたが、ここまでくると個人の努力で説明するのはなかなか難しいなという印象を抱きました。
Our Kids: The American Dream in Crisis by Robert D. Putnam
「邦題:われらの子ども:米国における機会格差の拡大」 出典)amazon
ただ、だからと言って自分のせいじゃないという編集モデルを持って生きることが望ましいかというのは別の話です。例えば人間には自由意志は存在しないという説明を受けた後、人の振る舞いは多少反社会的になるという実験結果があります。実際に自由意志が存在するかどうかと、存在することにしておくかどうかは別の話で、仮に幻でも信じておいた方が社会が円滑に動く幻も存在すると私は思っています。
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