スパイ小説大御所の新作話題沸騰!
Japan In-depth / 2017年8月28日 23時45分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・スパイ小説の大御所、ジョン・ル・カレの新作「スパイたちの遺産」が話題を呼んでいる。
・トランプ政権がロシアンゲートで揺れている今、タイムリーな作品だ、などと米メディア評価。
・アメリカが今や好ましくない存在として描かれている点も興味深いとの書評も。
スパイ小説といえば、ジョン・ル・カレ(John le Carré)である。(写真1)スパイの世界を迫真に描く作家としては全世界のトップともいえるだろう。なにしろこの半世紀も数えきれないほどの名作で全世界の無数の読者を魅了してきた大家なのだ。その大作家が85歳の現在、またまた新作を世に出すというのだ。
▲写真1 ジョン・ル・カレ(John le Carré) Photo by Krimidoedel
ル・カレの名を全世界に響かせたのはなんと1963年の「寒い国から帰ってきたスパイ(The Spy who came in from the Cold)」(写真2:書名は以下、いずれも日本語版のタイトル)という作品だった。イギリス人のこの作家は以来、確実なペースで国際的な話題を呼ぶ名作を世に出してきた。
▲写真2 「寒い国から来たスパイ(The Spy who came in from the Cold)」ジョン・ル・カレ著 出典: flicker by Mat Hampson
「鏡の国の戦争」(1965年刊)、「ドイツの小さな町」(1968年),「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」(1974年)、「リトル・ドラマー・ガール」(1983年) 、「パーフェクト・スパイ」(1986年)、「ロシア・ハウス」(1989年)・・・など、ソ連共産党が1991年に崩壊して、東西冷戦が終わるまでは、ほとんどがソ連とイギリス・アメリカのスパイの戦いが主題だった。
ル・カレ自身がイギリス政府の外交官、さらにはかの有名な諜報機関のMI6(注1:写真3)に勤務し、ベルリンなど東西冷戦の最前線で活動した際の体験や知識に基づくスリルとサスペンスの小説ばかりだった。
▲写真3 ヴォクソール橋からテムズ川越しに見たSIS本部ビル Photo by Tagishsimon
私自身も1980年代の後半、ロンドンに勤務した時期、「パーフェト・スパイ」という大作を夢中で読んだものだった。二重スパイたちの複雑な心理や行動が危険きわまる国際情勢のなかで生き生きと描かれるさまは文字どおり手に汗を握る展開だった。
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