今知る、震災市長のリーダーシップ
Japan In-depth / 2017年9月7日 15時59分
上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・福島県相馬市長立谷秀清氏が手記を上梓、震災直後の取り組みが明らかに。
・立谷市長は震災当日夜「仮設住宅の為の土地、双葉郡からの避難者の受け入れ」を迅速に指示した。
・医療では内部被曝検査、土壌汚染検査、住民健診など住民目線に立った施策も実施、外部移住者を増やした。
8月1日、立谷秀清・福島県相馬市長が『東日本大震災 震災市長の手記―平成23年3月11日14時46分発生』(近代消防社)という本を出版した。災害対策に関心がある方には、ご一読を勧めたい。
東日本大震災 震災市長の手記―平成23年3月11日14時46分発生 単行本 – 2017/8/1立谷 秀清 (著) 近代消防社
立谷氏は医師だ。相馬市に生まれ、仙台一高を経て、福島医大に進んだ。昭和52年に同大を卒業後、東北大学の内科に入局。昭和58年に立谷内科医院を開業した。この医院は、後に相馬中央病院(一般49床、療養型48床)へと発展する。
▲写真:立谷秀清相馬市長 出典)相馬市HP
立谷氏の政治活動は平成7年に福島県議に当選したことに始まる。その後、落選。平成14年1月に相馬市長に当選する。現在、4期目だ。
私が、立谷氏と知り合ったのは、震災直後に仙谷由人・衆院議員(当時)に紹介されたのがきっかけだ。仙谷氏からは「相馬市の市長が助けを求めている。私が知る中で、もっとも能力が高い市長の一人だ」と言われた。立谷氏の携帯に電話して、少し話をしたら、仙谷氏の評価が正しいことがすぐにわかった。指示、依頼が具体的で適確だからだ。
後日、相馬市役所の職員から、「震災後の市長のリーダーシップは凄まじかった」と聞いた。震災当日の夜には「棺桶を確保すること」、「仮設住宅のための土地、双葉郡からの避難者を受け入れる住居を確保すること」と指示したそうだ。避難所や食料の確保など、災害時の市役所の通常業務に加え、先を見据えた対策を立てていたことになる。
このことが後日効いてくる。海と山に挟まれた浜通りは狭く、空き地が少ない。相馬市が多くの支援者を受け入れ、仮設・復興住宅を速やかに建設できたのは、立谷市長の英断に負うところが大きい。
▲写真:相馬市大野台第七応急仮設住宅 出典)福島県建築住宅課(復興住宅担当)HP
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