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福島とアジアを繋ぎたい 若手医師の思い

Japan In-depth / 2018年3月2日 10時23分

福島とアジアを繋ぎたい 若手医師の思い

上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)

「上昌広と福島県浜通り便り」

【まとめ】

・福島県沿岸部の医師不足は全国平均と比べ深刻。

・森田麻里子医師は地域医療の現状に疑問を投げかけた。

・森田医師、育児情報の発信をライフワークに。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=38718でお読み下さい。】

 

■ 福島県沿岸部の医師不足の現状

東日本大震災から7年が経とうとしている。私は福島県浜通りの医療支援を続けている。浜通りは今でも医師不足だ。相双地区の2016年末の医師数は160人で、2010年末の236人から32%も減った。人口10万人あたりの医師数は146人。全国平均(252人)は勿論、シリア(150人)やコロンビア(147人)にも劣る(シリア、コロンビアはWHO版数値を使用)。

浜通りの医療は問題山積だ。私は長期的にお付き合いさせて頂きたいと考えている。これからも、やる気のある若者を浜通りに紹介したいと思っている。それは苦労が人を育てるからだ。今回は、その一例をご紹介したい。それは森田麻里子医師だ。

■ 医師の僻地勤務に疑問を投げかけた森田医師

森田医師との付き合いは、彼女が大学2年生のときだ。私立桜蔭高校から、2006年に東京大学教養学部理科III類に進学した。医学以外に何でも学びたいという若者だった。

彼女の学生時代は、福島県立大野病院産科医師逮捕事件、救急車たらい回し事件などをきっかけに医師不足・偏在が議論された。

図1は「日経テレコン」というデータベースを用いて、「医療崩壊」という単語が全国紙に取り上げられた頻度を調べたものだ。彼女の学生時代、特に1~4年生の時期に、「医療崩壊」が国民的関心を集めたことがわかる。

▲図1 全国紙に「医療崩壊」という単語が登場した頻度 ©上昌広

当時、厚労省は若手医師が僻地での勤務を嫌がり、都会で働きたがると考え、若手医師を強制的に僻地で勤務させようと、様々な政策を打ち出そうとしていた。医師の絶対数が不足しているのに、厚労省が医師の配置を差配すれば、必ず利権が生じる。そして腐敗する。これは20世紀の中国やソ連の教訓だ。

問題意識を感じた彼女は、この問題を研究した。そして、その成果を大学4年生の時、朝日新聞の『私の視点』に「臨床研修計画配置より自ら選びたい」という文章にまとめて発表した。大学5年生のときには、現在、福島で活動する坪倉正治医師との英国の医学誌『ランセット』に「日本の医療政策」というレターを発表した。

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