パフォーマンス理論 その19 停滞について
Japan In-depth / 2019年7月14日 7時0分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役
【まとめ】
停滞状態とはスランプではなく、成長が止まり、パフォーマンスが停滞していることである
成長しやすいのは、混沌の状態から秩序に移行する最中
停滞を打ち破るには、環境を変えるなどの揺さぶりが必要で、一度ピタリとやめてみることも効果的
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depth https://japan-indepth.jp/?p=46756 のサイトでお読みください。】
長く競技をやっていると、停滞状態に入ることがある。ここで言う停滞状態は実力が落ち込むスランプとは違い、問題があるわけではないが成長が止まりまさに停滞してしまうことを指している。人によってはこれを安定と呼ぶこともあるのかもしれない。こうした時期が長く続くと自分のモチベーションも低くなる。何をやっていいかわからない状態や、まだ未熟で型が定まっていない状態はこの停滞の定義から外しておく。この停滞状態から抜け出るにはどうすればいいか。
すごく乱暴に分ければ選手やチームの状態は混沌と秩序に分けられる。競技を始めたりチームを組み始めた時は、混沌の状態から始まる。ハードルを飛ぶにしてもどこに力を入れたらいいか、トレーニングをどう計画したらいいか、コーチとどうコミュニケーションをとっていいか、何がポイントかがわからない。そこから少しずつ学んでいき、そして徐々に技能が熟達していく。技能が熟達するとそこには経験と計画が生まれ、秩序が生まれる。今何をしているのか、次に何が起こるのか、何を計画すればいいのかがわかるようになる。そして多くのことが予想の範囲内で行われるようになる。基本的には混沌から秩序の状態に向かうことがパフォーマンスを高める上でよいこととされる。
イメージでいうと砂場で砂山を作りその頂点に水を流し込む。すると水が溢れそれぞれの方向に流れていく。水は右に行ったり左に行ったりまたは溜まり場を作ったりしながら徐々に下に流れていく。しばらくするとその流れが溝を作り、その溝に沿って水が流れるようになる。一度溝ができた山ではよほどのことがない限り流れは変わらなくなる。この初期状態が混沌で、後半が秩序だ。
トレーニング効率で言えば、秩序が高まった状態の方が良い。方向性が定まっていて、次に何をすればいいか、何が起こるのかがわかっているから、無駄がない。混沌状態ではそもそもどちらに向かえばいいのかがわからないので力が分散し無駄が多くなる。ところが、人間の創造性が高まり、成長しやすいのは、混沌の状態から秩序に移行する最中にある。かなり混沌に近い人もいれば、秩序に近い人もいて、人それぞれだが、完全に秩序が保たれた状態で活力が最大化はしない。トレーニング効率を高めようと思えば秩序が望ましいが、個人の生命力ひいては成長を最大化させようと思うと混沌の方が望ましい。
この記事に関連するニュース
-
サイゼリヤは金儲けのためのレストランではない…ミラノ風ドリアを300円で売り続けている創業会長の哲学
プレジデントオンライン / 2024年4月4日 7時15分
-
「集中が続かなくてつらい」状態から抜け出す5つの方法
PHPオンライン衆知 / 2024年4月2日 0時0分
-
「よいも悪いも、好きも嫌いも一切忘れなさい」人生が不思議と好転し悩みが解消する禅の教え
プレジデントオンライン / 2024年3月25日 13時15分
-
勉強で結果を出す人が使う「意識を変える言葉」2選 やる気が出ないときはタイマーを3分セット
東洋経済オンライン / 2024年3月22日 16時0分
-
話が通じない人とは“脳タイプ”が異なる...科学者が説く、人間関係のモヤモヤの原因
PHPオンライン衆知 / 2024年3月19日 11時50分
ランキング
-
1イチロー先生 おこづかいUPの交渉術は「キラーフレーズ」 現役時代「給料10倍になりました」
スポニチアネックス / 2024年4月17日 18時40分
-
2日本戦ドタキャン北朝鮮にFIFA主催大会参加資格停止の追加処分も「可能性が高まった」韓国報道
東スポWEB / 2024年4月17日 16時18分
-
3引退発表の長谷部誠 日本のファンに向けて動画でメッセージ「まだありがとうとは言いません」
スポニチアネックス / 2024年4月17日 21時42分
-
4「大谷翔平が特異なのは…」水原一平事件で垣間見えた私生活 ドジャース番記者が改善要求
東スポWEB / 2024年4月17日 11時4分
-
5“無職”の時でも「全部負けちまった」 やめられぬ賭博…水原容疑者の生々しい実態
Full-Count / 2024年4月17日 7時40分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください