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パフォーマンス理論 その23 最高速度について

Japan In-depth / 2019年7月18日 7時0分

パフォーマンス理論 その23 最高速度について


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役 


【まとめ】


最高速度に制限をかける要因は、



接地している間に十分な力を出せなくなる
足が前方に運べなくなる
手足が中心から離れコントロールできなくなる

 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depth https://japan-indepth.jp/?p=46905のサイトでお読みください。】


 


陸上競技の足の速さと球技における足の速さで決定的に違うのは最高速度の概念だろう。陸上の100mでは後ろの地点で最高速度が出現するほど望ましくだいたい60m地点で出現するといわれる。一方、球技ではおそらく最高速度出現地点は30,40m程度で、最初の1,2歩がどれだけ速いかが重要と言われる。100m特有のテクニックはなるべく長く加速し最高速度を高めることにある。私の100mのベストタイムは10″49なので、本当の頂点の世界をどの程度理解しているか疑わしいが努力してみたいと思う。


最高速度を決定している要因は何か。見方を変えて、最高速度は何によって制限されているかと考えてみたい。簡単に言えば、地面に接地している時間単位で出せる力の大きさによって決定されている。自転車で坂道を降っていて、ペダルから足を離し地面を踏んでみる。最初のうちは地面を踏める感触があるが次第に地面を踏めるどころか地面に弾かれるようになってくる。弾かれるようになったタイミングは自分の足が地面を踏む時間よりも、自転車に乗っている自分の移動速度が速くなったことを意味する。加速し次第に接地できる時間が短くなるからだ。わかりやすく言えばこの境目が自分の最高速度の境目になる。


トップ選手の最高速度は時速40km以上になる。このような高速で地面を踏む時には、能動的に力を使っていては間に合わない。つまり足を早く動かすやり方では追いつかないということだ。では、どうしているかというと、筋肉を緊張させて各関節を一定の角度に固定し足を一つの硬いバネのような状態にして、自分の体が足の上に乗ってくるのを待っている。そして足の上に自分の体重が乗ると(だいたい体重の5倍の力がかかるといわれる)そこに張力が生まれる。張力が生まれればその後に跳ね返ってくるので、その力で自分の体を前方に運ぶ。私の競技人生で良い状態の時には、ドクター中松のジャンピングシューズのようだと感じていた。今現在xiborg社の義足の開発を手伝っているが、義足がたわんで跳ね返る原理は競技時代の感触と近いと感じている。


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