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パフォーマンス理論 その26 敗北後の整理について

Japan In-depth / 2019年7月21日 7時0分

パフォーマンス理論 その26 敗北後の整理について


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役


 


 


【まとめ】



敗北後の整理は、1、振り返りー事実の把握 2、分析ー課題設定3、対策ー具体的な今後の計画。
敗北して落ち込んだとしても、落ち込み続けないことが重要
間違えた課題設定は新たな問題を引き起こす。

 


【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depth https://japan-indepth.jp/?p=46960 のサイトでお読みください。】


 


常に試合でいい結果を出し続けることはできない。うまくいかない時や、負けるときもある。敗北したことそのものよりも、敗北後にどう内省し、整理するかがその後の競技人生を決める。


敗北後の整理は、簡単に言えば以下の三段階にまとめられる。


1、振り返りー事実の把握


2、分析ー課題設定


3、対策ー具体的な今後の計画


大切なことは敗北して落ち込んでも、落ち込み続けないことだ。よく熟達者になれば敗北して落ち込まなくなると思われるが、実際には少なくとも私もその周辺のアスリートも負ければ毎回落ち込んでいた。ただ、年齢と共に徐々に立ち直るのが早くなっていった。熟達した禅僧と坐禅の初心者では、坐禅の最中に音がなった場合同じように脳波に乱れが出た。ただ、熟達した禅僧の方が乱れた状態から元に戻るのが圧倒的に早かった。そういうものに近いのかもしれない。落ち込むこと自体は大して問題にならないが、敗北を引きずることで判断に歪みが出たりトレーニング効果が減少したりするの問題になる。感情を抑制するほど落ち込み時期は長引くので、中途半端に落ち込まず思いっきり2,3日落ち込んで、忘れるようにしていた。


振り返りは事実の把握が重要だが、人はどうしてもありたい自分や、見せたい自分で歪みが生まれる。周囲に対してはそのように強がってもいいが、自分とコーチに対してだけはさらけ出せるようにならないといけない。ここで取り繕えば、分析も、対策も全て歪んでくる。プライドが高く自分と向き合えなければ、最後の本質的なところにたどり着けない。


試合で負けた時は、ネガティブな見方をしがちだが結果が悪かったからといってこれまでやってきたことが間違えだったとは限らない。競技者にはゆらぎがあり、調子は少なからず上下する。ただ雨が降っただけなのになぜ雨が降ったのかを分析しても無駄だ。また新しく何かに取り組めば、馴染むまでに一旦競技力が下がることがある。効果が出るまでに時間差があるからだ。そもそもこれだとはっきりわかるような勝因や敗因など実際にはない。メディアや社会に対しては多少演出してもいいが、それと現実的な取り組みは別だということをしっかりと自分で理解しておかなければならない。私も調子が悪い時に、ころころやり方を変えて余計に事態を悪化させたことがある。勇気がいるが少なくともある一定期間(私は3、4ヶ月程度だった)は結果を無視してやり通した方がいい。


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