かんぽ生命不正販売問題の裏
Japan In-depth / 2019年8月10日 17時10分
八木澤徹(日刊工業新聞 編集委員兼論説委員)
【まとめ】
・かんぽ生命契約不正問題で日本郵政、日本郵便、かんぽ生命保険トップが謝罪会見。
・過酷な営業目標やノルマを職員に課した経営の責任を問う声も。
・郵便局保険窓口からかんぽと国内保険消え、外資に独占される異常事態に。
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かんぽ生命保険の契約不正問題は深い闇を落としている。親会社の日本郵政と販売を担当する日本郵便、かんぽ生命保険の3社トップは7月31日に記者会見を開き、長門正貢日本郵政社長が「郵便局の信頼回復、再発防止のための改善策に迅速に取り組みたい」と陳謝した。しかし、かんぽ生命と親会社の日本郵政の株価は上場以来最安値を更新。不正のツケは国民資産を毀損し、政府の株売却計画にも暗雲が立ちこめている。
「多数のお客さまに不利益を生じさせ、信頼を損ねた点について深くお詫び申し上げる」――不適切な保険販売が相次いで発覚した問題を受け7月10日、かんぽ生命の植平光彦社長はこう謝罪した。この時点で発覚した不正は案件は9万3000件だった。しかし、7月末には18万件まで拡大。原因の徹底調査を進める外部専門家による特別調査委員会(委員長・伊藤鉄男元最高検察庁次長検事)が今年12月末をめどにまとめる調査報告ではさらに被害が広がる可能性がある。
問題となったかんぽ(旧簡易保険)は全国の郵便局で販売されてきた保険で100年以上の歴史がある。1916年、医師の診断や職業上の制約がない「簡易な保険」として庶民の間に広がり、戦後も保険契約額は1000万円程度に抑えられていたが、国営事業だった郵便局の信頼を背景に急速にシェアを伸ばし、民間生保や外資系保険から「民業圧迫」と批判されてきた。
「官から民へ」のフレーズの下、小泉純一郎内閣は竹中平蔵氏を司令塔に郵政3事業分割・民営化を推進。一民間生命保険会社となったかんぽ生命だが、逆に郵便局の信頼に頼り切り、販売手数料収入に依存する日本郵便も、地方の高齢者を食い物にする不正な販売手法に手を染めていく。
郵便局員というと「安定しているが安月給」というイメージがあるが、民営・分社化以降、保険担当はノルマが課される一方、新契約獲得次第でどんどん収入が上がる歩合制が強まった。年収1千500万円を下回ったことがないという保険担当者もいれば、“目標額”を達成できない担当者は厳しい叱責や研修という名の罰則が待っている。
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