離脱派が伸長した理由・政治家編 今さら聞けないブレグジット 最終回
Japan In-depth / 2019年9月3日 11時24分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・移民増による賃金抑制圧力を忌避。欧州統合を歓迎しなかった労働党左派。
・ボリス・ジョンソンがジャーナリスト時代に保守党内に欧州懐疑派を醸成。
・合意なき離脱による経済的ダメージへの具体策は示されず。
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シリーズ最終回ということで、今さらではあるが、ブレグジットをめぐる英国議会の動きを、少しだけおさらいしてみよう。
まず、保守党が第一党ではあるが、単独過半数は確保できておらず、世に言うハング・パーラメント(宙ぶらりん議会。少数与党を揶揄した言い方)である。もう少し具体的に述べると、議席数650の下院が立法権を持っているが、保守党の議席数は252。対して最大野党の労働党は200議席を持っている。他に大政党と言うと、自由民主党(以下、自民党)が102議席だが、この党はもともと労働党右派が分派して旗揚げした社会民主党と、旧自由党が大同団結したもので、もしも労働党と連携すれば、議席数において保守党を大きく上回ることとなる。
メイ前首相が、離脱協定案を3度上程して3度否決されるという屈辱を味わわされたのも、労働党と自民党が一致して反対したからである。自民党はもともと親EUの立場であったのに対し、労働党は〈雇用の確保を最優先させる穏健離脱派〉だったが、その立場からも、EUから大した譲歩も引き出せなかったメイ首相は、追い落としの対象とせざるを得なかった。もちろん、「政府案に反対するのも、野党の仕事のうち」という要素もあったが。
▲写真 テリーザ・メイ前英首相(2019年7月8日) 出典:UK Prime Minister
一方、北アイルランド諸派のうち、保守党のイデオロギーにもっとも近いとされる民主独立党が閣外協力しているが、わずか3議席。 しかも、この党は北アイルランドとアイルランド共和国との国境管理が再び強化されることを懸念して、ブレグジットそのものに反対している。
このように、議会において強硬離脱派は四面楚歌と言える状態だが、理由は、多くを語るまでもない。英国経済が大混乱に陥る事態を、大半の議員が恐れているのだ。
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