スマトラゾウ、インドネシアで死骸
Japan In-depth / 2019年12月2日 11時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・絶滅危惧種のスマトラゾウの死骸が相次いで発見されている。
・象牙の国際取引は原則禁止されているが需要は少なくない。
・密猟、森林火災、ペットの問題があり、対処の体制構築が急務。
インドネシアのスマトラ島にだけ生息する絶滅危惧種のスマトラゾウが最近相次いで死骸で発見され、自然保護当局と警察が死因調査と犯人捜査に乗り出す事態になっている。
インドネシア政府はスマトラゾウをはじめとする同国固有の絶滅の危機に瀕した種や希少動物の保護を従来から訴えているが、密猟者によると思われる被害は後を絶たず、動物保護団体などからは緊急の対応を政府に求める声が上がっている。
11月18日、スマトラ島リアウ州ベンカリス県にあるプランテーション内のユーカリ林で作業中の作業員が周囲に漂う異臭に気が付き捜索したところ、ゾウの死骸を発見した。
直ちに作業監督からプランテーションを経由して報告が地元自然保護局に届き、翌12日に同局担当者、ゾウの専門家、獣医など11人が現場に向かった。
現地での簡単な検死の結果、死後約1週間が経過したオスのスマトラゾウで年齢は推定40歳であることがわかった。銃弾の跡やワナにかかった形跡、縛られた様子もなく、毒殺の疑いも少ないことから死因を詳しく調べている。
死骸は頭部と鼻が切断され、象牙はなくなっていた。現場の様子から自然保護局関係者は「象牙を採取するために頭部、鼻を切断したものと思われ、間違いなく象牙密輸業者による犯行だろう」との見解を示した。
スマトラゾウに限らず、象牙は現在原則として国際取引が禁止されているが、印鑑や彫刻などの装飾品、ピアノの鍵盤、漢方薬などに使われることもあり、中国や日本での需要は少なくないという。
▲写真 象牙でできた印鑑 出典:photo by Thomas Quine
これまでのケースではスマトラ島で密猟された象牙はマラッカ海峡を海路でマレーシアやタイに密輸され、中国方面に運ばれる国際的な密売ルートがあるとされている。
■ 25歳のメスは毒殺の可能性も
11月21日には同じくスマトラ島の北端アチェ州の東アチェ県にあるアブラヤシ農園でスマトラゾウの死骸がまた発見された。
死骸は推定25歳のメスで、現場の状況を見た地元自然保護局の獣医は「毒殺された可能性がある」として解剖して胃の内容物の分析を今後実施する考えを示している。
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