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乳がん検診、マンモの意義【2020年を占う・医療】

Japan In-depth / 2020年1月2日 11時24分

乳がん検診、マンモの意義【2020年を占う・医療】


尾崎章彦(常磐病院乳腺外科、医療ガバナンス研究所)


【まとめ】


・40代女性のマンモグラフィー、乳がん見つかりにくく最終的に乳がんでないケース多い。


・追加検査し乳がん発見されても、死亡率減少に結びつくか不明確。


・マンモグラフィーを補う技術のニーズは確実に存在。


 


2019年も、ネットニュースや新聞を眺めていると、乳がんと新たに診断された芸能人の名前をちらほらと見かけた。室井佑月さんや長山洋子さんなど誰もがメディアで一度は目にしたことがあるような方々である。


現在、日本女性の11人に1人が生涯のうちに乳がんになると報告されている。実際、2014年に乳がんと診断された女性は78,529人と、女性におけるがんの罹患率のランキングにおいては、近年、不動の1位である(1)。その点を考慮すると、芸能界において毎年新たに乳がんと診断されている方々がいることも納得できる。


これほどまでに日本において乳がんの診断が増えた理由が2000年から自治体検診にマンモグラフィーが導入されたことだ。それ以降、無症状の早期癌の頻度は劇的に上昇しており、マンモグラフィーは期待された役割を果たしていると言える。


一方で、過去10年は、マンモグラフィーに対しての信頼が大きく揺らいだ期間でもあった。従来、例えば、米国においては、マンモグラフィーは、40歳以上の女性に対して毎年実施することが推奨されていた。しかし、2009年に、米国予防医学専門委員会は、従来の推奨を大きく見直し、過度なマンモグラフィーの実施に警鐘を鳴らすようになった(2)。


具体的には、50歳以上の女性に対しては、推奨されるマンモグラフィーの実施頻度を2年に1回と間隔を広げるとともに、40歳代の女性に対しては原則としてマンモグラフィーの定期的な実施は推奨しないという修正が行われた。


最大の理由は、40歳代の女性においてはマンモグラフィーによる死亡率減少効果が相対的に小さいことにある。例えば、60歳代の女性においては、10,000人が10年間マンモグラフィーを2年毎に実施することで21人の死亡が防げるのに対して、40歳代の女性においてはわずか3人の死亡しか防ぐことができなかったとされている(3)。


さらに、40歳代の女性においては、偽陽性(乳癌ではないにもかかわらずマンモグラフィーで異常が指摘されること)や不要な針生検の頻度が他の年代と比較して高いことが指摘されている。言い換えれば、40歳代女性のマンモグラフィーにおいては、絶対数として乳がんが見つかりにくい上に、異常が指摘された場合においても、最終的に乳がんでないケースが多いのである。


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