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中国漁船船員水葬の波紋拡大

Japan In-depth / 2020年5月24日 15時29分

中国漁船船員水葬の波紋拡大


大塚智彦(フリージャーナリスト)


「大塚智彦の東南アジア万華鏡」


【まとめ】


・中国漁船の船員〝水葬〟事案は国連に提起される問題に発展。


・各国の事情の違いが、中国に付け入る隙を与えているとの見方。


・東南アジアで目立つ中国や中国企業の横暴に、対中感情は悪化。


 


中国漁船に乗り組んでいたインドネシア人船員が操業中の太平洋で病死し、その遺体が海に投棄された「水葬」事件は、その後別の中国漁船でも同様の事案が発生していたことなどが新たに判明した。


こうした事態を受けてインドネシア政府は中国政府に抗議して真相解明を求めただけに留まらず、中国漁船に船員を斡旋、派遣していたインドネシアの派遣業者を人身売買容疑で容疑者認定したほか、スイス・ジュネーブにある国連人権理事会(UNHRC)に対して問題提起をするなど中国との2国間関係にとどまらず、国際問題に発展しようとしている。


こうした背景には中国漁船によるインドネシア人乗組員への過酷な環境での労働や人権侵害に抵触するような操業実態が次第に明らかになったことなどにより、国際社会、特に東南アジア各国がより厳しい目を中国に向け始めているという状況もある。


今回の一連の経過は4月27日に韓国南部釜山漁港に寄港した中国漁船3隻の船団から1人のインドネシア人船員が急病で地元病院に急搬送されたが、肺炎の疑いで死亡したことに端を発している。さらに1隻の漁船で密かにインドネシア人船員が撮影したという動画が韓国の文化放送(MBC)によって放映されて、ネットで拡散された。その映像に対しインドネシアでは衝撃が走った。


その動画には太平洋サモア沖海域で操業中に病死したとされるインドネシア人船員の遺体が入っているとみられるオレンジ色の遺体袋が甲板から中国人の手によって海中に「投棄」される様子が記録されていた。


この動画放映をきっかけに航海中のインドネシア人船員が1日18時間労働、酷い時には30時間連続労働、食事は6時間おきに10から15分、海水ろ過水か海水そのものを飲まされていたなどの過酷を通り越した人権上問題がある中国漁船の労働実態がMBCなどの取材で次々と明らかになったのだった。(※参考=5月14日「中国漁船、死亡船員を水葬に」)


このためインドネシア外務省は3隻に乗っていた残るインドネシア人14人を即刻帰国させるとともに、5月7日には駐インドネシア中国大使館の肖千大使を外務省に呼んで事実関係の調査報告を求める事態になった。


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