スマートシティ東京竹芝で始動

Japan In-depth / 2020年9月10日 18時0分

スマートシティ東京竹芝で始動


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)


【まとめ】


・東京都は「東京ベイエリアビジョン」を掲げ、世界に同地区を発信。


・浜松町竹芝地区に「スマートシティ竹芝」プロジェクト進行中。


・第一歩として「東京ポートシティ竹芝」が9月14日に開業。


 


「竹芝」と聞いてピンとくる人はそう多くないだろう。「浜松町」なら東京都民以外の人でも分かるかもしれない。羽田空港からモノレールで都心に向かう終着駅だからだ。JR東日本山手(やまのて)線「浜松町駅」の東側、東京湾に面した地区が「竹芝」だ。


竹芝は隅田川の河口部にあたり、埠頭がある。神津島・八丈島行きや父島行き、東京湾納涼船などの遊覧船が出航する。島に行く人くらいしか訪れることが無かった場所で、東京生まれ東京育ちの筆者も数えるほどしか行ったことがない。


その「竹芝」が今、大きく変貌を遂げ始めた。


 


■ スマートシティ竹芝


東京都は東京2020オリンピック・パラリンピック後を見据え、築地や豊洲、お台場など臨海部の将来像を描く「東京ベイエリアビジョン(仮称)」を掲げている。その基本コンセプトは、「東京ベイエリアを世界に発信する」ことだ。


竹芝から浜松町へと広がる再開発エリアはそのベイエリアの一翼を担っている。下の図でいうと、リニア中央新幹線(2027年開業予定)の始発駅となる品川から山手線で3駅目が浜松町、次が新橋、有楽町、東京へと繋がる。



▲図 「東京ベイエリアビジョン」(仮称)対象エリア(イメージ) 出典:東京都


その浜松町駅から海の玄関口竹芝エリアまで歩いて数分。同エリアは、2015年3月に国家戦略特別区域計画の特定事業として内閣総理大臣認定を受けている。そして今、デジタルxコンテンツ産業の集積による国際ビジネス拠点にすることを目指したスマートシティ構想がここに動き出した。その名を「Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)」プロジェクトという。


その第一歩として9月14日に開業するのが、東急不動産と鹿島建設が開発した「東京ポートシティ竹芝」だ。オフィスタワーには、ソフトバンクグループ株式会社とソフトバンク株式会社の本社移転が決まっている。最先端の都市型スマートビルはどのような機能を持っているのだろうか。



▲図 「竹芝地区エリアマネジメント」対象範囲 出典:東急不動産


■ 東京ポートシティ竹芝



▲写真 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー 手前右下が旧芝離宮恩賜庭園 提供:東急不動産


浜松町駅を出て、旧芝離宮恩賜庭園の脇を通り、竹芝方面に歩く。ふと上を見上げると、上空になにやら連絡橋のようなものが。これが、東京ポートシティに接続する全長500メートルの「歩行者デッキ」だ。首都高速都心環状線の上を跨いで行くことが出来る。9月14日開業のタイミングで一部通行が可能になる。工事が完成すれば駅から直接、東京ポートシティ竹芝オフィスタワーに行くことが出来るようになり、利便性は一気に高まる。



▲写真 歩行者デッキ 浜松町駅から竹芝方面 ⒸJapan In-depth



▲写真 歩行者デッキ 東京ポートシティ竹芝オフィスタワーから浜松町駅方面を望む ⒸJapan In-depth編集部


オフィスタワーに入ってまず驚いたのは、ビル内に設置されたセンシングデバイスの多さだ。なんと約1000個もあるという。得られたデータはリアルタイムで一元管理され、入居企業のオフィスワーカーや店舗テナント、来館者、ビル管理にそれぞれ適切な価値を提供する。


例えばワーカーには、エレベーター・共有スペース・トイレの混雑状況に加え、ビル内店舗(カフェや飲食店など)の空き状況などを提供する。来館者にも、エレベーターや店舗の混雑状況、運行情報などの各種情報がリアルタイムで、館内30台のサイネージに配信されるというきめ細やかさだ。


また、ビル管理では、要注意者を検知してセキュリティを向上させたり、施設内ヒートマップなどの情報を提供して快適性を向上させたりできる。清掃ロボットや警備ロボットなども配備される。


ここまでリアルタイムデータが、あらゆる利用者にとって快適で便利な環境を実現するために活用されるのは過去に例がないのではないか。



▲写真 AI清掃ロボット ⒸJapan In-depth編集部



▲写真 実証実験中の紫外線(UV-C)照射ユニットを搭載した自律走行ロボット(実際の配備は未定)ⒸJapan In-depth編集部


又こうしたテクノロジー面だけではなく、ビル自体、利用者の快適性を向上させる構造になっている。「スキップテラス」と名付けられた低層階(2~6階部分)の緑豊かなオープンエアー空間は実に6800㎡。こうした複合ビルでは異例の広さだ。東京湾も一望でき、海風を感じながら陽に当たっていると実に気持ちいい。夜の眺めも格別だろう。オフィスワーカーの心身の健康増進と生産性向上に貢献しそうだ。



▲写真 スキップテラス 提供:東急不動産



▲写真 スキップテラス 上階から下の階まで階段で移動出来る ⒸJapan In-depth編集部


■ スマートシティ構想


これまでもスマートシティ構想は様々な地域で生まれた。しかし、街全体がインターネットに繋がり、あらゆるデータを共有して地域に住む人や働く人の利便性・快適性を向上させる段階には残念ながら至っていなかった。


しかし、東京ポートシティ竹芝オフィスタワーにソフトバンクが入居したことで、真のスマートシティ実現に大きく近づいた。同ビルは全館5Gが導入されている。データを集計、解析するプラットフォームは将来は「スマートシティプラットフォーム」(都市OS)として他の地域にも展開させていく考えだ。


記者会見でソフトバンクの宮内謙代表取締役社長執行役員兼CEOは、「このビルを最先端テクノロジーを体験できる場所にしていく。1~2年以内にスマートシティと言える世界になる」と胸を張った。



▲写真 ソフトバンク株式会社宮内謙代表取締役社長執行役員兼CEO 提供:東急不動産


また、東急不動産株式会社の岡田正志代表取締役社長は「竹芝地域のほぼ全ての企業や団体の人が一丸となってこの街を良くしていこう、というネットワークがベースにあり、そこに最先端の技術を持つソフトバンクが入ってくれたのが強みだ。形だけでなく、実効的な実りあるスマートシティを作ることができる」と述べた。



▲写真 東急不動産株式会社岡田正志代表取締役社長  提供:東急不動産


新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークを採用する企業が増え、オフィスの空室率上昇を懸念する声も出ている。しかし、ソフトバンクの宮内社長は、快適で先端的なオフィス環境であらゆる部門の社員が意見交換することが、クリエイティブなアイデアを生むことにつながる、と述べ、オフィスで社員が仕事をする意義を強調した。


ウィズ・コロナ時代のオフィスのあり方、そして働き方は今まさに模索中だ。従来の考えにとらわれない新たな労働環境の実験が、ここ竹芝地区で始まろうとしている。


このスマートシティ構想が同地区を起点としてどう他の地域に広がっていくのか。竹芝地区から当分目が離せない。



▲写真 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー 提供:東急不動産


なお、9月18日(金)から9月20日(日)には、開業を記念してまちびらきイベント「TAKESHIBA SMARTCITY FES(竹芝スマートシティフェス)」が開催される。Crystal Kayさんや隣接する劇団四季などのパフォーマンスが行われる予定。


(了)


トップ写真:竹芝地区 東京ポートシティ竹芝を東京湾から臨む 提供:東急不動産


 


【修正】2020年9月10日22時10分


旧:ソフトバンク株式会社宮内謙代表取締役社長執行役員


新:ソフトバンク株式会社宮内謙代表取締役社長執行役員兼CEO


旧:東急不動産株式会社岡田正志代表取締役社長執行役員


新:東急不動産株式会社岡田正志代表取締役社長


 


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