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尖閣問題「国有化以来」との表現やめよ

Japan In-depth / 2020年9月22日 19時0分

尖閣問題「国有化以来」との表現やめよ


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)


「古森義久の内外透視」


【まとめ】


・「日本政府による尖閣国有化以来」中国公船の侵入増、は誤り。


・中国側侵入増は2012年9月の国有化前から顕著。


・「中国漁船の体当たり事件以来」等に表記変えるべき。


 


尖閣諸島の日本領海への中国艦艇の侵入に関しては日本のメディアの多くがいつも「日本政府による尖閣諸島の国有化以来」という表現を使う。日本が国有化の措置をとったことが中国側の侵入の原因であるかのような表現である。


朝日新聞のごく最近、2020年9月7日の記事にも以下のような記述があった。


「日本の民主党政権が12年9月に尖閣を国有化。すると中国は反発し、公船の航行は一気に月20日以上に増えた」


ちなみに上記の記述で「公船の航行」というのは日本側の領海や接続水域への侵入のことである。しかも「公船」というのは中国の人民解放軍の指揮下にある中国海警の武装艦艇のことなのだ。さらに以上の記述で最悪なのは、日本側が国有化の措置をとったから中国が反発し、侵入の回数を増し始めたのだ、というような理屈である。


そこには「日本政府による尖閣諸島の国有化→→中国艦艇の日本領海への侵入」という因果関係が描かれている。その背後には日本側の国有化がなければ、中国側の侵入もなかっただろう、というふうな思わせが浮かんでいる。


以上の朝日新聞の記述に象徴される因果関係の示唆はまちがっている。


中国側の尖閣への不当な攻勢や侵入は2012年9月の国有化の以前から顕著になっていたからだ。


その一つの曲がり角は2010年9月7日の中国漁船による日本の海上保安庁の巡視艇への違法の体当たりだった。この中国漁船は日本領海内で違法な操業をしていた。日本側が取り締まるのは日本が主権を有する法治国家である限り、自明であり、責務だった。


だが中国漁船はこの日本側の取り締まり、つまり違法操業の停止と日本領海からの退去を単に警告として求めたことに対し、日本の巡視艇に故意に衝突するというさらなる違法行動に出たのである。このあたりの事実関係はすべて日本側のビデオに記録された。


日本側はこの漁船を拘束した。乗組員も身柄を拘束した。その後すぐに中国側の普通の乗組員は釈放し、船長だけの拘束を続けた。日本の法律に沿った当然の措置だった。日本側は中国人船長を公務執行妨害現行犯などで逮捕し、起訴する構えをみせていた。ところが突然、日本の検察は同船長を釈放してしまった。


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