中国5中全会、何も決まらず
Japan In-depth / 2020年11月3日 15時27分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
「澁谷司の東アジアリサーチ」
【まとめ】
・今度の5中全会は、「習近平派」と「反習近平派」の妥協の産物。
・習主席の後継決まらず。経済政策は具体的数字示されず。
・台湾政策は、「武力統一」から「平和統一」路線に転換。
今年(2020年)10月26日から29日にかけて、中国共産党の19期5中全会が開催された。結論を先取りすれば、今度の5中全会は、「習近平派」と「反習近平派」の妥協の産物だった。
同会で、習近平主席のリーダーシップが発揮された形跡は見られない。おそらく、「反習派」の“巻き返し”で、「習派」は政権維持がやっとの状況ではなかったのだろうか。
第1に、同会人事では、今の習近平・李克強体制後、誰が後継者に指名されるのか注目された。以前、陳敏爾・重慶市トップと胡春華・副総理が、次期主席・首相として有力視されていた。だが、最近、急浮上したのは、上海市のトップ、李強である。そして、李強こそが、習主席の後継者になるのではないかと噂されていた。
けれども、陳敏爾・胡春華・李強らの人事は決定されなかった。この時期、重要な人事が決まらないというのは、党内が分裂してまとまっていない証左だろう。ちなみに、習近平主席は終身制(1982年に廃止された「党主席」が復活か)を敷いて、第20期(2022年〜27年)・第21期(2027年〜32年)も政権を担うつもりかもしれない。しかし、この案には大きな疑問符が付く。
第2に、人事以上に重要なのは、これからの経済政策である。
5中全会では、確かに、2021~25年の「第14次5ヶ年計画」が打ち出された(各期の5中全会では通例「5ヶ年計画」を可決)。ただし、今年5月下旬に行われた全人代同様、今回も、具体的な目標数字が示されなかったのである。
数字は、ほとんど過去のモノばかりだった。例えば、昨2019年、1人当たりの可処分所得は、3万0733元(約48万2000円)、今年第3四半期までの1人当たりの可処分所得は、2万3781元(約37万3000円)だったという。
また、同会では、2035年までの長期目標を掲げた。そして、「1人当たり国内総生産(GDP)を中等先進国並みにする」との目標を設定している。だが、中国には、月収2000元(約3万1400円)以下の人が約9.64億人いて、全体の68.85%を占める。実現は不可能に近いだろう。
さて、2015年、「中国製造2025」が発表された。中国が「製造大国」から「製造強国」を目指す意欲的な経済政策だった。だが、いつの間にか、「中国製造2025」は叫ばれなくなった。近年、計画が挫折したためではないか。
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