ミャンマークーデター、日本の役割は
Japan In-depth / 2021年2月19日 18時0分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・国軍最高司令官ミン氏が最高意思決定機関を設置し体制作りを進める。
・ASEAN各国は欧米のような厳しい批判はせず慎重姿勢。
・ミャンマー各勢力と良好な関係を持つ日本が仲介役を果たせるか。
ミャンマー国軍が2月1日、クーデターを起こし、政権を率いるアウンサンスーチー国家顧問兼外相ら政府与党の幹部を拘束した。国軍最高司令官のミンアウンフライン氏が軍政の最高意思決定機関を設置して自ら議長に就任し、体制作りを進めている。
ミンアウンフライン氏は「規律ある民主主義を確立するため」と主張しているが、最大都市ヤンゴンでは大規模な抗議デモがあり「軍政を倒せ、スーチー氏を開放しろ」と声をあげながら市内を練り歩いた。軍政側はインターネットを遮断し、国内で2000万人以上が利用するフェイスブックなどへの接続も遮断した。
ミャンマー(旧ビルマ)が英国から独立したのは1948年。スーチー氏は1945年生まれで、父アウンサン将軍はビルマ建国の父と言われていたが2歳の時に亡くなっている。1962年以降は、軍がクーデターを起こし政治を支配することが多かった。
このためスーチー氏らが国民民主連盟(NLD)を結成、90年の総選挙で圧勝したものの、軍は政権移譲を拒否。スーチー氏は自宅軟禁されたが91年にノーベル平和賞を受賞したりした。2011年にようやく民政移管が完了すると15年の総選挙でNLDが勝利し、スーチー氏が実質的な政権トップとなる国家顧問兼外相に就任した。
▲写真 ミャンマー国家顧問アウンサンスーチー、2016年11月30日にシンガポールのイスタナで 出典:Suhaimi Abdullah / GettyImages
こうして約半世紀に及んだ軍政と、断続的に15年に及んだスーチー氏の軟禁にも終止符が打たれた。しかし国会議員の4分の1は軍人枠で占められるなど国軍の政治関与は今も続いている。特に17年には国軍が少数派のイスラム教徒ロヒンギャを迫害、約100万人が隣国のバングラデシュに難民として避難し、国際的批判を浴びている。
今回のクーデターに対するASEAN各国の態度は微妙だ。タイ、カンボジア、フィリピンは「内政問題だ」とし不干渉の立場だし、ベトナム、ブルネイは「状況を見守る」と介入しない姿勢をみせている。
一方、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどは「政治状況に懸念を感ずる。正常化を望む」などとしているが、欧米のような激しい批判を避け、ASEANとして一致した行動に出ることにも消極的だ。背後にアメリカ、中国、ロシアなどの大国が控えており、大国の思惑がそれぞれ違う上、ASEAN各国は独裁政権が多いのでハネ返りを恐れ、軽々に動けないのだ。
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