インドネシア後継戦闘機に米F16浮上
Japan In-depth / 2021年6月9日 19時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・空軍後継戦闘機選定めぐる各国の競争に、米F16最新鋭機が参入。
・もともとF16を保有するインドネシア空軍には運用や整備でメリット。
・「米政府のお墨付き」でF16最新鋭機が一気に「最有力候補」に。
軍装備、兵器の近代化を進めているインドネシア空軍に対して、米ロッキード・マーティン社が戦闘機F16の最新鋭バージョンの導入を呼びかけ、米政府も承諾済みであることを強調しながら売り込み合戦に参入してきたことがわかった。
これは地元メディアなどが5月29日に報じたもので、空軍戦闘機の後継機種選定に「米製F16の最新鋭戦闘機の導入」という選択肢が広がったことで、公式ではないが空軍は歓迎しているという。
インドネシアはロシア製戦闘機のスホイ27、スホイ30と共に米製戦闘機F16を保有し、運用している。対立する米ロの戦闘機を保有、運用していることから「戦闘機の設計段階から異なる思想」に由来するパイロット、整備員そしてインフラなどで融通の利かない不便な運用、メンテナンスが求められるという状況を抱えている。
こうした実状の背景には、米政府がインドネシアによる東ティモールでの深刻な人権侵害に対して踏み切った武器輸出禁止などの国際政治の影響があった。
■ 仏、オーストリア、韓国からも調達計画
空軍戦闘能力のさらなる向上に必要不可欠となる後継戦闘機の選定では、これまでにフランス製ラファール戦闘機、欧州のオーストリアが保有するユーロファイター・タイフーン戦闘機、さらに韓国が独自に開発を進めている次期戦闘機KFXなどが有力後継戦闘機として報道されてきた。
インドネシア空軍は現在30機のF16戦闘機を運用している。こうした米製戦闘機保有という実態から米のF35戦闘機の導入構想なども報じられたことがある。しかしこれまでにどの機種も後継機として最終的に決定するまでには至っていない。
背景には戦闘機の近代化の必要を認めながらも導入に関わる費用が高額であること、「複数の国の戦闘機を導入、運用することのデメリット」などを専門家が指摘していること、それに加えてインドネシアが国を挙げてコロナ感染防止対策を最優先課題として取り組んでいることなどを理由に、ジョコ・ウィドド大統領やスリ・ムルヤニ財務相が難色を示していることが影響しているという。
▲写真 ジョコ・ウィドド大統領 出典:Rick Rycroft - Pool/Getty Images
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