中国とはどんな国家なのか その2 信頼できない経済データと環境情報
Japan In-depth / 2021年7月25日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米研究機関の報告書から「中国の透明性」を読む。
・経済:マクロレベルでの正確なデータ・トレンドの把握が極めて困難。
・エネルギーと環境:分野による違いはあるが不透明で不正確なデータが多い。透明性は増しつつある。
中国はどれほど透明性に欠ける国家なのか。
その疑問に答える報告の内容を個別の分野について順番に紹介しよう。
アメリカ・ワシントンの大手研究機関、ヘリテージ財団による「中国の透明性報告」からである。この回では「経済」と「エネルギーと環境」についての骨子を伝えることとする。
【 経済 】
人口14億の中国の経済を正しく評価することはそもそも難儀をきわめる。マクロ経済レベルでの正確なデータやトレンドの把握が必要だが、それがきわめて困難なのだ。それでも一般的な手法は中国の国内総生産(GDP)の主要素、つまり消費、投資、政府支出、国内流通などをみることである。
だがこの手法にも問題がある。
第一にはGDPモデルは中国の経済福祉を正確には反映しない点だ。中国はGDP全体額では世界第二だが、人口1人あたりのGDPは他の先進主要国の5分の1に過ぎず、中国の国民の経済実態が明示されにくいのだ。
第二には、中国のGDP統計は腐敗している点である。中国当局では中央政府でも地方政府でも官僚たちは中国経済全体の成長が安定しているという構図を描くために、経済データを意図的に加工することが多い。政府の投資や支出が増加して経済全体が成長しているような数字が示されても、その裏では消費が減っているような実態が存在する。
▲写真 中国・天津市の「東洋のマンハッタン」化計画の絵と、その前を通り過ぎる男性(2013年) 出典:Photo by In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images
アメリカの中国分析者たちには純粋なエコノミストが少ないため、中国の経済面での国力の推定では中国側の公式発表に依存してしまう場合が多い。不透明の壁の背後をみないまま、中国経済の強さだけをみて、その弱さや欠陥に注意が行き届かないわけだ。中国政府も外部の分析者に錯覚をさせるために発表する経済データを巧妙に操作するのだ。
中国の経済に関するすべての公式データは国家統計局に集められている。人口動態、賃金、収入、小売り、教育産業などの資料に加えて各省などの地方政府からのデータも国家統計局に収集される。だがそれら資料の示すことと、現実の経済のあり方の間には顕著なギャップが存在するのだ。
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