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英仏、漁業権対立の行方混沌

Japan In-depth / 2021年11月2日 23時32分

英仏、漁業権対立の行方混沌




Ulala(著述家)





「フランスUlalaの視点」





【まとめ】





・EUを離脱した英国の領海の漁業許可証発行について、英仏の話し合い延長が決定。仏は、少なくとも11月4日までは制裁しないことに。





・仏制裁は、英海産物荷揚げ拒否や、英商品通関手続きの厳格化など。





・このままこじれると、英EU間で維持した関税ゼロの貿易協定の一部分が壊れる可能性もあり、英国にとっても不利益に。





 





1月にブレグジットで欧州連合(EU)を完全離脱した英国の領海で漁業の許可証発行について、フランスと英国間で長らくもめていたが、話し合いの延長が決定した。





11月1日までに英国側が英EU間の貿易協定で定めた規則に従わなければ、フランス側が制裁する予定であったが、少なくとも11月4日までは制裁しないこととなったのだ。この決定を受け、英国政府は、「綿密な議論が必要であるというフランスの認識」として歓迎し、フランス側の海洋水産海洋農業委員会(CNPMEM)の局長も、「良い兆候」とした。





英国とEUとの協定では、フランスをはじめとするEUの漁業者は、英国のEU離脱以前から英国やジャージー島周辺海域での漁業歴がある場合に限り、引き続き漁業ができることになっていた。しかし、英国側は一部の漁船を許可しなかったのだ。そのため、フランスではすでに10カ月も漁に出れず困っている漁師がおり、フランス政府としても自国の漁師を守るために一歩も引けない状態なのである。





このように英国が漁業許可を制限しようとしているのには理由がある。英国の漁民は、自国経済水域で外国漁船が操業していることに長年不満を募らせてきているからだ。





■ 英国とEUにとって、かなり重要な漁業権





英国周辺では、主としてオランダ、ベルギー、フランス、デンマーク、アイルランド、スペイン、ポルトガルなどの漁船が操業していた。





EUの各国は、内陸国が多いため英国の排他的経済水域(EEZ)へのアクセスは大きな意味を持っていた。そこで、欧州経済共同体(EEC)が資源保護措置を決定する権限を持ち、EU加盟国間のオープンで平等なアクセスを保証したのだ。





しかし、これは英国にとっては自国海域での主権を無くした状態であったともいえる。英国の漁民にとっては不満の種でしかなかったのだ。





英国の水産物と水産加工品の輸出額の65%はEU市場向けであったが、漁民の団体「離脱に向けた漁業」によれば、英国水域の漁獲量の59%が英国以外のEU漁船によるものである。もっと漁業での利益を増加させるためにはなんとしても自国海域での主権を取り戻す必要があり、そのためにEU離脱を推進していた。2016年6月の国民投票直前の調査では、英国の漁業従事者の92%は離脱派であった。





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