要介護者も共同住宅で住み続ける。相馬井戸端長屋の10年から見えてきた多様な高齢者の受け皿としての可能性
Japan In-depth / 2023年12月8日 14時0分
●地元に住み続けるという貴重な価値
この研究結果は「井戸端長屋: 東日本大震災後の孤立した高齢者のための共同住宅による解決策」(原題:Idobata-Nagaya: A Community Housing Solution for Socially Isolated Older Adults Following the Great East Japan Earthquake)として、 Frontiers in Public Healthという査読つき英文誌に11月22日に掲載されました。どなたでも読めますので、ぜひお時間ある際にご覧になっていただければ幸いです。
この論文の筆頭著者の阿部暁樹さんは、相馬育ちの相馬高校出身で、実は長屋のうちの1つは母校の中学校のすぐそばに立っています。私は今も阿部さんと月に1度程度、市の定期訪問にお供させてもらっていますが、彼は訪問するとよく入居者に可愛がってもらっています。どこどこの阿部です、というと皆さんには「ああ、あそこの阿部さんなんやね」と声をかけてもらえるのです。そんな会話をみなさんで集まってしているときの笑顔を見ていると、やはり、地元に住み続ける、土地勘のある場所で生涯を送るということの価値の重要さを痛感します。
論文では、このような長屋の取り組みは、災害のみにとどまらず、超高齢化社会、特に家族の支援をえにくく孤立しがちな高齢者が増える現在では、各所で応用可能ではないかと提言しています。震災後の困難を乗り越えてきた相馬だからこそ、また新たな挑戦が生まれてくるのかもしれません。
最後に、調査にあたっては、相馬市役所の方々、保健センターの方々に多大にご協力いただきました。いつも訪問の際にあたたかく私たちを迎えてくれる住民の皆様にもこの場を借りて感謝申し上げます。
(この記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会「Vol.23218 要介護者も共同住宅で住み続ける。相馬井戸端長屋の10年から見えてきた多様な高齢者の受け皿としての可能性」の転載です)。
トップ写真:相馬井戸端長屋 出典:相馬市ホームページ
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