平成27年の年賀状「もうすぐコーポレートガバナンスが日本を変える」
Japan In-depth / 2023年12月13日 18時18分
コーポレートガバナンスについて考えるとき、私はいつも小熊英二氏の言葉を思い出す(『日本社会のしくみ雇用・教育・福祉の歴史社会学』小熊英二、講談社、2019)。
弊著『身捨つるほどの祖国はありや』(幻冬舎 2020年)のなかで小熊氏の言葉をなんども引用してもいる。
「社会の合意は構造的なものであって、プラス面だけをつまみ食いすることはできないのだ」(小熊氏の上記本579頁)
「日本の経営者が、経営者に都合の良い部分だけをつまみ食いしようとしても、必ず失敗に終わる。なぜなら、それでは労働者の合意を得られないからだ。逆でも、経営者の合意を得られないから、同じことである。長い歴史過程を経て合意に到達した他国の『しくみ』や、世界のどこにも存在しない古典経済学の理想郷を、いきなり実現するのはほとんど不可能に近い」(同書571頁)
「年功賃金や長期雇用は、経営者側の裁量を抑えるルールとして、労働者側が達成したものだった」(同書573頁)
という小熊氏の分析は、著者の冴えを感じさせる。なぜなら、「日本の労働者たちは、職務の明確化や人事の透明化による『職務の平等』を求めなかった代わりに、長期雇用や年功賃金のルールが守られていることを代償として、いわば取引として容認されていた」からである(同書574頁)。
「日本は、職員というエリートの特権だった長期雇用と年功賃金を労働者にまで拡大させ、『社員の平等』を志向した。(中略)企業横断的な基準がないのが日本なのである」(『身捨つるほどの祖国はありや』476頁)
そういう現実がかつてあったのだ。社会とは労働者、勤労者、大衆である。コーポレートガバナンスは未だその心をつかんでいない。それどころか、そうでありながら「人的投資」などと平然として表面的な議論に熱中する。いったいなんのことだろう。なにが起きようとしているのだろう。
なにはともあれ、私は時間の経過、それも数年といった時間がことを成就させると思っている。安倍元総理がコーポレートガバナンスを提唱して8年。もうすぐ10年になるではないか、と積極的に考えているのである。
トップ写真:東京実景(イメージ)出典:Photo by Frédéric Soltan/Corbis via Getty Images
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