「GAFAなし」で取引可能 ブロックチェーンの本質を知る

J-CASTトレンド / 2019年9月26日 11時59分

■『ネクスト・ブロックチェーン 次世代産業創生のエコシステム』(編著・矢野誠、クリス・ダイ、増田健一、岸本吉生 日本経済新聞出版社)

わが国では、ビットコインのブームとともに関心が下がっているブロックチェーン。その技術の本質は、個人が保有する膨大な個人情報や、センサーやデバイスが集める各種の情報をGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような巨大なプラットフォームに頼らずに取引ができる点にある。仮想通貨は、ブロックチェーン技術の応用の一側面にすぎない。

本書は、経済産業研究所長を務める矢野誠教授を中心に、アルゴリズムを開発する海外の専門家に最先端の動きを学びながら、法律家、行政実務家を交えて研究した成果をまとめたものである。Society5.0を担う社会インフラとしてのブロックチェーンの将来が主題である。そのインフラが健全に発達するために、矢野教授の「市場の質理論」に基づいて議論され、これからの制度設計について提言している。

データ社会を支えるインフラ

農家の品種別生育データ、生活習慣病予備軍の生活データ、観光地の道路渋滞データなど、個人のプライバシーや事業者の営業秘密を守りながら、データを集める方法が生まれる。そのためには、データの作成者にデータの所有権を認めるべきと著者は主張する。現在、巨大なプラットフォームに集積しているデータは、その所有権が明確でなく、また、それゆえに、作成者自身の意思で他人と取引することができていない。

イーサリアムというアルゴリズムをご存知だろうか。ブロックチェーンには三層のアルゴリズムがある。データを暗号化して暗号資産として扱うアプリケーションが第一層、普段の生活ではモノやサービスに該当する。暗号資産を取引するための共通の基盤がDApps(ダップス)と呼ばれる第二層、GAFAの提供するサービスに相当する。これらを支えるインフラ、プロトコール層と呼ばれるのが第三層、イーサリアムはここに位置する。イーサリアムは、DAppsに共通する取引の対価としてイーサー(EHT)というネット空間上の取引単位(トークン)を発行している。このイーサリアムが、現在、世界中でアプリケーションを開発する土台となっている。2019年10月7日には、その関係者が来日して大きなイベントが開催される。

開発上の課題とデジタル通貨の未来

ブロックチェーンは、そのシステムの性格から、アルゴリズムをすべて公開して他人が検証することが求められる。いわゆるオープン・ソースである。多数の開発者が相互に監視することにより、電子資産の安全な取引を支えているのである。昨年、ビットコインの漏洩に起因して、仮想通貨取引所の規制が強化されたが、いったん規制をしてしまうと、アルゴリズムの開発の自由を奪うことになりかねない。専門家同士が相互にチェックするピア・レビューの仕組みがブロックチェーンにはふさわしいと提言している。

ブロックチェーンの発展にはいくつかの開発要素がある。たとえば、

(1)パソコンやタブレット端末に暗号カギを設定すること。

(2)ブロックチェーン上の取引(スマートコントラクト)を保護する民事法制度。

(3)膨大な取引を可能にするためのより高速度のプロトコール層。

これらの課題には、ブロックチェーンの専門家だけでなく、法律の実務家や行政も積極的に関与していくことが期待されている。

本書には通貨の経済学と題する章立てもあり、和同開珎から仮想通貨までの歴史を振り返りながら、理想的な仮想通貨のあり方を検討している。仮想通貨は銀行口座の預金通貨と似て、データと信用を基にしている。銀行のオンラインシステムと同等以上の信頼性のあるアプリケーションができれば、各国の通貨であれ、それ以外のデジタルのトークンであれ、口座を開設して安全に取引することが可能となる。専門的な内容もあるため詳細は割愛するが、仮想通貨の実務を支える貴重な検討である。

ドラえもんの妻

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