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ジェトロ、タイと韓国の営業秘密漏えい対策のセミナー実施(タイ、韓国、日本)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月17日 14時20分

ジェトロは9月11日、オンラインセミナー「タイおよび韓国における営業秘密漏えい対策セミナー」を開催した。両国の営業秘密漏えいの実情や保護制度、注目すべき判例などについて具体的に解説した。海外からの参加者も含め、570人を超える参加があった。

初めに登壇したTMI総合法律事務所の鬼丸今日子弁護士、高祖大樹弁護士の講演では、日本よりも転職や異動が盛んなタイでは、定期的な教育や研修が欠かせない点を指摘した。また、近ごろ業務上の使用も一般的になりつつあるSNSやチャットアプリは、会社の管理が及びにくく漏えい時のトラッキングや退職時の破棄、情報の返還も困難な一方、一律で禁止することも現実的ではない点に言及。場合分けしながら制限や禁止を行うことを勧めた。例えば、スケジュール調整などの簡素な連絡は可、ファイル送付は禁止、研究機関の機密ゾーンは携帯機器自体の持ち込みを禁止するなどだ。また、判例を基に、漏えいした情報の商業的価値が低い場合には裁判所は情報の有用性が欠如しているとみなし、それを営業秘密とは認めないと判断し得る点や、営業秘密侵害罪と認められるためには「営業秘密を公に開示したこと」の証明が要件で、刑事事件化のハードルが高い点にも言及した。

次に登壇した金・張法律事務所の青木久典弁理士、金元(キム・ウォン)弁護士の講演では、韓国では営業秘密流出について年間300~500件の摘発があり(注1)、また、特許庁特別司法警察(特司警)制度により、2019年以降、特許庁が営業秘密、特許、デザイン侵害捜査の権限を持つなど、国が積極的に営業秘密漏えい対策に取り組んでいる状況を紹介した。近年の法改正では、中小企業に配慮する意図から、秘密管理性の要件が緩和されたほか、増額賠償(注2)の強化が行われていることを解説した。特に先端技術については、自社の営業秘密の流出だけでなく、他社の営業秘密の不正流入についても警戒が必要と指摘した。

今回のセミナーは、経済産業省委託「海外における営業秘密漏えい対策支援事業」の広報セミナーとして行われた。ジェトロでは2019年度から同事業を実施しており、「個別支援事業」で2024年度は中国、タイ、ベトナム、インドネシア、インド、欧州の一部を対象国・地域とし、それぞれに現地法人のある日本企業に対し、営業秘密保護の体制構築に関する現地の専門家によるコンサルテーションや社員向け研修といったサービスを提供している。また、日本企業の海外進出時や海外進出検討時の営業秘密管理のあり方についての検討に役立つ「営業秘密管理マニュアル」などを、各国での法令整備の進展や紛争事案の蓄積などを踏まえて作成している。

(注1)日本の営業秘密侵害関連の摘発事件は年間29件(2022年、警察庁)。

(注2)権利を故意に侵害する場合には、損害額の最大5倍まで賠償責任を負わせる(特許法第128条第8項、第9項)。

(上原広夢)

(タイ、韓国、日本)

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