外資企業、シンガポールの最上位所得層の6割を雇用(シンガポール)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月24日 10時0分
シンガポール人材省(MOM)は9月17日、シンガポールの所得分布の上位10%に当たる月給1万2,500シンガポール・ドル(約138万円、Sドル、1Sドル=約110円)以上の地元労働者(国民と外国人永住権者)の6割を、外資企業(注)が雇用していることを明らかにした。また、MOMによると、企業数全体に占める外資企業の割合は約20%で、地元労働者の33%を雇用している。同省が外資企業による地元労働者の雇用比率を公表するのは初めて。
MOMは、2024年上半期の国内雇用市場の動向が堅調だったとした。2024年上半期に国民(永住権者を含む)の就労者数は4,900人増え、外国人の就労者数は1万1,200人増加した。外国人の低熟練労働者向け「ワーク・パミット(WP)」保持者は、2023年12月の111万3,000人から、2024年6月に113万8,200人に増加した。一方、同時期にかけて、外国人の幹部・専門職向け就労査証「エンプロイメント・パス(EP)」保持者は20万5,400人から20万2,400人へと減少したほか、中堅向け「Sパス」保持者も17万8,500人から17万6,400人へと減少した。同省はEPとSパス保持者の減少の理由について、企業が新型コロナウイルス流行後に行った社員数削減や、就労査証の発給基準の見直しが影響したとしている。同省は2023年9月からEPについて、新しい審査ポイントシステム「補完的評価フレームワーク(COMPASS)」を導入した(2023年4月4日記事参照)。また、EPとSパスの発給基準となる最低基本月給を段階的に引き上げている(2024年3月11日記事参照)。
同省は「給与と就労者数は、経済成長に伴って、引き続き増加していく」との短期的な見通しを示した。地元労働者については、金融・保険サービス、情報通信と専門サービスでの雇用が増加すると予測したほか、9月20~22日に開催のフォーミュラ・ワン(F1)自動車レースや、年末にかけての祝祭シーズンも新たな雇用を生むとした。
一方、長期的には、国民の労働参加比率が既に高いことなどから、就労者数の増加が鈍化するとの見方を示した。そのうえで、「地元の労働力を補完し、国民のために良い雇用を創出するには、引き続き海外の人材を受け入れ、外国の投資を誘致する必要がある」と強調した。
(注)外資企業は、地元資本が50%未満の企業を指す。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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