アイルランド産業界は英EU通商・協力協定合意を歓迎も、経済的影響を懸念(英国、アイルランド)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2021年1月8日 13時25分

英国政府と欧州委員会が12月24日に通商・協力協定に合意したことを受け(2020年12月25日記事同日付記事参照)、アイルランドのミホール・マーティン首相は同日に声明を発表した。「交渉結果を歓迎する」としつつ、「英国のEU離脱(ブレグジット)は尊重するが、これまでわれわれはEUの課題で緊密に協力してきたため、非常に残念。英国との人、歴史、経済の関係性は強く、ボリス・ジョンソン首相とは引き続きこの関係を維持していくことに合意している。また、アイルランド/北アイルランド議定書の履行は非常に重要。誰もが内容に満足しているわけではないが、北アイルランドの人々にとって良い結果だと信じている」と述べた。

経済・産業団体からも、声明が発表されている。英国アイルランド商工会議所のジョン・マクグレイン事務局長は「新たな協定によってアイリッシュ海(をまたぐ両国間)で約900億ユーロの貿易と、両国の40万人の雇用が維持される」と歓迎する一方で、「企業は依然としてコストの増加と遅延、また金融サービスなどの分野での混乱に直面している」とコメント。アイルランド農業協会(IFA)のティム・カリナン会長は「合意に安堵(あんど)しているが、アイルランドの農業食品分野には大きな困難をもたらすだろう。非関税障壁の影響を強く懸念している。また、英国がオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、米国、メルコスールと貿易協定を結べば、英国市場において、アイルランドからの輸出食品の価値は低下し、農業経営者の収入は大幅に減少する」と述べている。

物流混乱は今後顕在化する可能性も

なお、アイルランドと英国との物流に目立った遅れはみられていない。移行期間終了(2020年12月末)前の在庫積み増しや移行期間終了直前まで続いていた交渉によって生じていた不確実性などにより、物流量自体が落ち込んでいることも背景にあり、ウェールズ北部ホーリーヘッド港を通過する大型トラックの交通量は、通常の約3分の1に減少している(「BBC」2021年1月7日)。ただし、物流量の回復につれ、混雑や遅延が生じる可能性もある。アイルランド政府は物流インフラ対策として、ダブリン港とダブリン市道の交通管理計画を含む、緊急時対応計画などを準備している。

アイルランドの消費者が移行期間終了後に英国からオンラインで購入した商品を受け取る際、高額な配達手数料を請求された、といった事例も報じられている(「アイリッシュ・タイムズ」紙1月6日)。こうした混乱は、しばらく続くとみられる。

(宮口祐貴)

(英国、アイルランド)

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