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8月の米小売売上高は前月比0.1%増と予想上回るも伸び率は鈍化、裁量的支出が減少傾向(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月18日 14時0分

添付資料PDFファイル(196 KB)

米国商務省の速報(9月17日付)によると、8月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.1%増(注1)の7,108億ドル(添付資料表参照)となり、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.2%減)を上回った。なお、6月の売上高が前月比0.3%増から0.3%減へと大幅に下方修正された一方で、7月は同0.7%増(速報値、2024年8月16日記事参照)から1.1%増に上方修正された。市場予想は上回ったものの、消費者がより低価格帯の商品を求める傾向や裁量的支出を絞る傾向が強く表れる結果となっている。

無店舗小売り、ヘルスケアなどが押し上げ要因に

業種別にみると、最も押し上げに寄与したのが無店舗小売りで前月比1.4%増の1,236億ドル(寄与度:0.24ポイント)となった。消費者の必需品や新学期用品をオンラインでより安く探し求める節約的な行動が反映された可能性がありそうだ。また、ヘルスケアは0.7%増の378億ドル(0.04ポイント)と増加に寄与した。

一方、8月はマイナスとなった業種も多く見られた。ガソリンスタンドは、ガソリン価格の下落(8月:前月比0.6%減、2024年9月12日記事参照)が寄与し、1.2%減の520億ドル(マイナス0.09ポイント)となった。そのほか、自動車は7月の反動増(注2)の影響が剥落したほか、新学期商戦で前月増加していた家具や家電などの耐久消費財の販売もマイナスとなり、消費者の節約志向による買い控えの動きがみられた。また、小売り統計で唯一のサービス項目であるフードサービスは、前月から横ばいで売り上げが伸び悩んだ。

今回の結果について、米国の保険・金融サービス会社ネイションワイドの金融市場エコノミスト、オーレン・クラッキン氏は「売り上げ増はいくつかの特定のカテゴリーに集中しており、消費者が裁量品から必需品へと傾いていることを示唆している。これは通例では、ストレスの増大を示す明らかな兆候だ」と指摘した。また、取引信用保険を提供するアリアンツ・トレード・グループのシニアエコノミスト、ダン・ノース氏は「消費者は元気がなくなっている」とした上で、その背景としては、消費者の実質可処分所得、過剰貯蓄がともに減少していることが影響しているとの見方を示した(ヤフーファイナンス9月17日)。

足元では、特に低所得者層を中心とした消費者が支出への慎重姿勢を強めており、ウォルマートなど大手小売り各社の間では、集客を狙って値下げ競争が激化しているほか、これまで業績が比較的好調だったディスカウント店の間では、他社との差別化に苦戦する企業が破産に陥るなど、消費の減速継続を背景に各社とも厳しい状況に置かれている(2024年9月18日記事参照)。

消費者マインドが示す状況もまちまちで、過去2年間に上昇が続いた消費者信頼感の伸びも狭い範囲にとどまった。民間調査会社コンファレンスボードが8月27日に発表した8月の消費者信頼感指数は103.3(7月:101.9)と1.4ポイント上昇した。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は134.4(7月:133.1)に、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は82.5(7月:81.1)と、それぞれわずかに上昇した(添付資料図参照)。

同社のチーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は、現況に対する消費者の見方について「7月と比較すると、消費者は現在の景況感、将来の景況感ともに前向きになったものの、労働市場に対する懸念も強まった」と指摘した。「これは、最近の失業率の上昇を反映していると思われる。消費者は将来の収入に関しても前向きな見方をやや弱めている」と付け加えた。また、同氏は「消費者は8月上旬の金融市場の混乱に動揺し、株式市場に対して楽観さを失った可能性が高い」とも述べた。7月の雇用統計(2024年8月5日記事参照)を受けた米国の景気減速懸念から、世界全体で大幅な株安が引き起こされるなど、不安定で変わりやすい状態に嫌気がさしているもようだ。

(注1)実数は0.05%増。

(注2)2024年6月はサイバー攻撃の影響で自動車・同部品の売上高が落ち込み(2024年7月17日記事参照)、その需要が翌7月に流れた。

(樫葉さくら)

(米国)

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